水不足、透析に支障 転院、井戸水利用…病院苦慮 清水区の断水

 台風15号の影響で断水が続く静岡市清水区で、腎臓疾患がある患者への人工透析治療が困難に直面している。一部の病院では葵区や駿河区への転院を手配済み。ただ、多くの患者を抱え診療を続ける医院では26日、十分な水を受け取ることができず透析時間を短縮するなど苦肉の策を取った。井戸水を透析用に転用するクリニックもあった。

透析を行う患者(右)に声を掛ける杉山寿一院長=26日午後、静岡市清水区の杉山クリニック
透析を行う患者(右)に声を掛ける杉山寿一院長=26日午後、静岡市清水区の杉山クリニック

 「市には断水した24日、本格診療が始まる26日までに40トンをお願いした。しかし、結局届いたのは10トン。水不足を痛感している」。260人の透析患者を抱える宮地医院(同区下野西)の森田照基技師長は疲れた表情で取材にそう話した。
 26日には外来診療も休止。老廃物を取り除くための透析を通常4時間から3時間に短縮した。水道水は院内の特殊な装置で精製する必要があり、さらにかさは減る。宮地武彦医師は「1週間続けば診療に悪影響を来しかねない」と心配したが、27日からは他県からの給水車で40トンの支援を受けられることになり、安堵(あんど)の表情を浮かべた。
 透析治療を行う区内の7病院と市で構成する「清水区災害時透析連絡会議」では年4回会議を開き、シミュレーションを重ねてきた。ただ、市保健衛生医療課の担当者は「上下水道局との調整の結果、想定通りにはいかなかった」と述べた。
 杉山クリニック(同区七ツ新屋)では、緊急用に整備していた井戸水を急きょ透析用に使うことに決め、被災以降も患者約150人に4時間の人工透析を提供。杉山寿一院長は「井戸水は鉄分とマンガンが多く、精製時にメンテナンスが必要となる」と話し、早期復旧を期待する。
 26日からは一般区民に井戸水の提供も開始。午後に透析を受けた同区上原の鈴木久男さん(67)は「透析患者は災害時に常に命の危険にひんする。いつも通りの治療で安心した」と話した。

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