下田高同窓会「中高一貫校を下田に」 静岡県教委に要望へ 賀茂の再編議論に影響も

 伊豆の賀茂地区で、下田高同窓会が他地域からの生徒受け入れも視野に入れた中高一貫校設立を求める活動を始めた。静岡県教委は高校再編案を盛り込んだ「県立高第3次長期計画」を再検討する地域協議会を同地区に設置しており、議論に影響を与える可能性がある。

賀茂地区1市5町の中学生数の推移
賀茂地区1市5町の中学生数の推移

 同窓会は8月、中高一貫校設立を検討する委員会を設置した。年度内にも具体構想をまとめた要望書を県教委に提出する意向という。
 県の統計によると、賀茂地区の全日制高校の定員充足率は2017年度に9割を下回り、22年度は80・8%(速報値)。長田育郎同窓会長は「少子化による生徒の減少に加え、地域の将来を担う人材が外に出て行っている。子供にとって魅力的な教育環境の整備が急務だ」との考えを示す。
 構想案では、現在の下田高に併設の中学を設けて中高一貫校とし、寄宿舎を整備。地域のリーダー育成などを掲げ、大学の研究機関や農林技術研究所など県の出先機関とも連携した教育体制の構築を打ち出す。豊かな自然を生かしたプログラムを実践し、UターンやIターンを念頭にしたキャリア教育の展開も目指す。
 県内では川根本町の川根高が18年度から入学者の全国公募を実施。学校や過疎地域の存続につなげる狙いで、22年度は全校107人のうち6人が県外からの入学者という。同校の藤井建樹教頭は「近隣では小中まで同級生が固定化される傾向がある。新たな同級生が加わり、地元の子供たちの見識も広がる」と話す。

小中 計画が難航


 少子化により公立小中学校の再編が各地で進められる一方、賀茂地区ではさまざまな地域事情を理由に計画が難航している。

 西伊豆町は27年度の小中一貫校開校を目指し、24年度には複式学級解消へ3小学校のうち2校の先行統合を進める。ただ、建設地を巡る議論がまとまらず8月にようやく最有力地を示したばかり。鈴木秀輝教育長は「建設費への反発や防災対策を考慮した結果、難航してしまった」と話す。

 東伊豆町は小中学校の統合計画が見直しを迫られている。2校ずつの小中を一貫校2校に再編する見立てだったが、出生数が想定を大幅に下回ったため、計画を再検討している。

 教育行政学が専門の静岡大の島田桂吾准教授は「急激に人口減が進んでいる地域では、たとえ統廃合しても小規模校のままという課題がある」と指摘。「単独の市町だけでの統廃合には、将来的に限界が見えてくる可能性は高い」との見解を示す。

 (下田支局・伊藤龍太、松崎支局・太田達也)


 <メモ>県教委の県立高第3次長期計画 正式名称は「ふじのくに魅力ある学校づくり推進計画」。県立高の教育の基本理念や学科改善の方向性を定めた計画で、2018~28年度を対象期間とする県立高再編案も盛り込んだ。県教委は22年度、少子化の進行や社会の急激な変化への対応として、新たに検討委員会を設置して同計画の再検討を始めた。検討委の議論に地元意見を反映させるため、再編対象校がある小笠、沼駿の両地区に加え、賀茂地区にも地域協議会を設けて意見を募っている。

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