菊川市の人生会議ノートを作成 生きざま知り個別ケア 松田真和氏/市家庭医療センター長【本音インタビュー】

 「家族ぐるみのかかりつけ医」として、さまざまな健康問題に対応する菊川市家庭医療センターのセンター長。今年、完成した同市の人生会議ノートの作成に携わった。人生会議の意義やノートの特徴について聞いた。

松田真和氏
松田真和氏

 -人生会議とは。
 「もしもの時に患者が望む医療やケアを前もって家族や医師らと話し合う『アドバンス・ケア・プランニング(ACP)』の愛称。その人の最善を、その人を中心にして皆で探し、繰り返し話し合う。決定よりも共に考える過程が重要。生きざまを大切な人に伝える会議でもある。医療の立場からすると、患者の生きざまが分かればその人らしいケアができる可能性がある。たとえば心臓病の80代男性ではなく、駅伝選手だった○○さんだと思うと接し方が変わる。患者の尊厳をより大切にできる」
 -ノートの特徴は。
 「市と医療・介護職が連携して『私のこれからノート』が完成した。一般的な人生会議ノートにある、大切にしていることや信頼できる人のリストに加え、安心・生きがい・うまいご飯・笑顔・穏やかな日々といった『あいうえお』で自分らしさを表す市オリジナルの項目も。財産や遺品などを書く終活ノートも生活に直結して便利だが、これからノートはその人らしさを表現する場になる」
 -作成の経緯は。
 「市民に人生会議を押し付けないか心配だったが、市職員や医療・介護職員と何度も話し、市民と一緒により良い未来を創りたいと思うようになった。市民にノートを知ってもらい、使った人から感想をもらって菊川らしいものにしたい」
 -人生会議への抵抗をどう減らすか。
 「死を連想するテーマは受け入れられにくいが、市民が人生や生きる意味を主体的に考え、それを話し合えるつながりが地域の中にあることは必要。そのために『きくがわ全市民ヒーロー化計画』と名付けた市民活動を始める予定だ。2人一組で互いの人生や大切なことをヒーローインタビューのように語り合い、内容を紙に記録する取り組み。話し手は自分の生きざまを肯定的に受け止め、聞き手は人生観や死生観を養うことができる。家庭や自治会、高齢者サロン、病院などでの活用を考えている」
 (聞き手=掛川支局・伊藤さくら)

 まつだ・まさかず 岡山市出身。2017年に静岡家庭医養成プログラムを修了。同年から菊川市家庭医療センター常勤医・指導医として外来診療や訪問医療に従事。21年にセンター長に就任した。36歳。

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