幼稚園のベンチ 静岡刑務所の受刑者が修繕 社会貢献で「充実感」

 静岡刑務所(静岡市葵区)の受刑者が社会貢献活動の一環で、静岡精華幼稚園(同区)の古くなった木製ベンチの修繕に取り組んでいる。これまでに3台を仕上げ、今後も10台を直す計画。関係者は、受刑者にやりがいを感じてもらうことで社会復帰への意欲を高めていくと同時に、地域で刑務所への理解が深まっていくことを期待している。

受刑者が修繕した木製ベンチの仕上がりを確認する静岡刑務所の小林勝彦所長(左)と静岡精華幼稚園の熊谷隆弘園長=9月下旬、静岡市葵区の同園
受刑者が修繕した木製ベンチの仕上がりを確認する静岡刑務所の小林勝彦所長(左)と静岡精華幼稚園の熊谷隆弘園長=9月下旬、静岡市葵区の同園

 静岡刑務所は社会貢献として2019年度、受刑者による近隣公園の清掃活動を始めた。ただ、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降は外出自粛を余儀なくされ、刑務所内で可能な貢献活動を模索してきた。
 子育て中の職員花田幸一郎さん(38)が偶然、静岡精華幼稚園の園庭開放イベントにプライベートで参加した際、ベンチの老朽化を知り、園側に刑務所の活動を紹介。21年の秋からベンチを順次引き受けてきた。
 ベンチは1950年代後半に父母会から寄付され、遊戯室で使用されてきた。塗装がはげたり、ささくれが目立ったり―。受刑者はベンチをいったんばらし、補強しながら直していく。園の熊谷隆弘園長は「正確に丁寧に仕上げてもらい、ありがたい」と感謝する。
 受刑者はベンチに加え、木工や造形遊び用の材料を園児が使いやすい大きさに切りそろえる作業も手伝っている。受刑者からは「充実感と達成感がある」「自分の子どもを思いだし、責任感が増した」といった感想が聞かれるという。刑務所の小林勝彦所長は「本人に“気づき”が生まれた。役に立っているという意識が醸成され、働く意味を自覚できる」と意義を説く。
 再犯を防ぐにはまず、出所後の住まいや仕事を確保することが欠かせない。そのためにも、小林所長は刑務所を「地域に受け入れてもらう必要がある」と強調する。社会貢献活動や情報発信を通じて、地域の理解を広げたいと考えている。

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