幻の長八作品「繊細な描写」 150年間所在不明も2年前発見 漆喰鏝絵「遊女普賢菩薩」 松崎で公開

 松崎町松崎の伊豆の長八美術館は22日、漆喰鏝絵(しっくいこてえ)を新たな芸術分野として確立した同町出身の左官職人・入江長八(1815~89年)の幻の作品「遊女普賢菩薩(ふげんぼさつ)」の展示を始めた。制作された明治初期からおよそ150年間所在が不明だった。

約150年間所在が分からなかった入江長八の作品「遊女普賢菩薩」=松崎町の伊豆の長八美術館
約150年間所在が分からなかった入江長八の作品「遊女普賢菩薩」=松崎町の伊豆の長八美術館

 関東在住の所有者から2020年7月、同町の伊豆長八作品保存会に連絡があり、発見された。21年6月に同館に寄託され、保管していた。22年5月、作業中に一部が破損し、6月に静岡市の静岡文化財研究所に修復を依頼。10月中旬に作業を終え、公開された。
 漆喰鏝絵は、なまこ壁をつくる左官の技術と日本画の手法を組み合わせた作品。遊女普賢菩薩は縦42センチ、横65センチ。長八の伝記「伊豆長八」(結城素明著、1938年刊行)によると、長八と親交があった男性の息子が父親のために制作を依頼し、贈ったとされる。六牙(ろくげ)の白像の背に乗る遊女普賢菩薩が巻物を読む姿を描いている。
 学芸員の〓見(うつみ)志乃さん(33)は「生きている間に見られるのは奇跡。細部まで描き込まれた繊細な描写を見てほしい」と話す。29日午後7時から同館で開かれるナイトミュージアムでは、伊豆長八作品保存会長の近藤二郎さんが館内を案内する。
 (松崎支局・太田達也)

 ※〓は雨カンムリに雅のツクリ、その右に鳥

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