⚽台風で深めたクラブ愛 育成と運営、地域根差して【飛躍 藤枝J2昇格㊦】

 静岡県内に甚大な被害をもたらした9月下旬の台風15号で、藤枝の本拠地・藤枝総合運動公園サッカー場も大きな痛手を受けた。「インフラ系がすべて駄目。普通に考えたら試合開催は不可能だった」。徳田航介社長(37)は被災を目の当たりにした時の心境を述懐する。

J2昇格を決め、サポーターと喜びを分かち合う藤枝イレブン=20日、長野市の長野Uスタジアム(写真部・宮崎隆男)
J2昇格を決め、サポーターと喜びを分かち合う藤枝イレブン=20日、長野市の長野Uスタジアム(写真部・宮崎隆男)

 チームは昇格争いの真っただ中で、ライバル松本との大一番が控えていた。窮地を救ったのは地元の支援だった。破損した電源の代わりに建設会社などから借り受けた多数の小型発電機を並べ、ガソリンをつぎ足しながら試合を運営。感謝の思いを胸にチームはホームで連勝し、昇格に大きく前進した。
 藤枝のホームタウンは藤枝市をはじめとする志太榛原地域の4市2町。清水と磐田に挟まれた後発クラブは地元に浸透を図ろうと、努力を続ける。「小学校訪問や地域イベントなどホームタウン市町の協力要請は基本的にすべて引き受け、選手には地元の応援があってこそサッカーができると伝えている」と徳田社長は説明する。
 選手育成も中長期的視野で取り組み、アカデミーにJ1で活躍したクラブOBの谷沢達也氏(38)と枝村匠馬氏(36)をコーチとして迎えた。サッカーの街では既に県内で強豪の藤枝東高と藤枝明誠高が中学生を受け入れるチームを設置するが、強化部の大迫希氏(31)は「藤枝の超攻撃的サッカーをユースにも浸透させ、少しでも早くトップ昇格できる選手を育てたい」と意気込む。
 本拠地は台風被害と別にバックスタンドを改修している。完工は来年12月までの予定でJ2の1年目には間に合わない。上のカテゴリーで観客数が増えると駐車場が足りず、徳田社長は「喫緊の課題」と来季の試合運営に頭を悩ます。
 資金力も2021年度の決算を比較するとJ3下位で、スポンサー収入の増強など営業収益をどう上げるか、課題は山積する。創立14年目でつかんだJ2昇格。徳田社長は「ここがスタートライン。地域から愛され、街づくりに貢献するクラブという原点を忘れず、歩みを進めたい」と決意を新たにする。

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