後を絶たない置き去り事案 保育現場の人員確保を【とうきょうウオッチ/記者余論】

 牧之原市の認定こども園の送迎バス内に園児が置き去りにされ死亡した9月の事件以降も、特別支援学校などのバスや自家用車内に子どもを置き去りにする事案が全国で後を絶たない。政府は子どもの安全を守る緊急対策の関連経費234億円を2022年度第2次補正予算案に計上し、2023年4月から安全装置の設置を義務化する。大人の目で子どもを守る態勢が向上するが、事故の根絶に向けては人員不足という課題が依然として横たわる。

記者会見する小倉将信こども政策担当相=22日、内閣府
記者会見する小倉将信こども政策担当相=22日、内閣府

 小倉将信こども政策担当相は記者会見で、繰り返し起こる同様の事案について「まだまだ現場が多忙で、意識が回っていない」と述べた。園児が亡くなる事故につながりかねない「ヒヤリ・ハット事例」も多数あるとみられる。安全装置の義務化にとどまらず、人的ミスをなくすための根本的な対策が欠かせない。
 来年度に設置される「こども家庭庁」を旗振り役として、子育て関連施策を大幅に充実させる必要がある。とりわけ、保育現場の慢性的な人員不足の解消が急務だ。低賃金、重労働の保育士の待遇をいち早く改善しなければならない。長年、実現されていない配置基準(保育士1人当たりの子ども数)の見直しも求めたい。
 政府は子育てを支援する姿勢をこれまで以上に強く打ち出し、保育現場の負担軽減や安全管理の意識向上につなげてほしい。岸田文雄首相は子ども関連予算の「将来的な倍増」を約束している。来年度の編成でも保育運営の実態に即した効果的な予算措置を期待したい。

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