サッカーJ1 静岡県内チーム消える 方向性の欠如、重い代償【追跡2022⑥完】

 サッカーJリーグ1部(J1)から静岡県内2クラブが降格した年末。ジュビロ磐田は経営トップの刷新で苦境から脱出を図ろうともがいていた。22日、新社長に就任した旧ヤマハ発動機ラグビー部OBの浜浦幸光氏(53)は「現場や選手の意見を聞けるのが自分の強み」と引き締まった表情を見せた。前例にとらわれない人選に変革の兆しがにじんだ。

リーグ終盤戦の静岡ダービーは引き分けに終わり、肩を落とす清水と磐田の選手たち=10月、静岡市清水区のIAIスタジアム日本平(写真部・小糸恵介)
リーグ終盤戦の静岡ダービーは引き分けに終わり、肩を落とす清水と磐田の選手たち=10月、静岡市清水区のIAIスタジアム日本平(写真部・小糸恵介)

 だが、待ち構える現実は深刻だ。外国人選手の契約を巡り、国際サッカー連盟から補強禁止処分を受け、クラブ存続の危機とも言える事態に直面する。
 清水エスパルスは、トップチームだけでなくユースも最高峰のプレミアリーグからプリンスリーグへ初めて降格。クラブとして地盤沈下が危惧される中、就任1年目のユースの沢登正朗監督(52)は「トップを含めてチームとしてどういう方向性で行くか」と言葉を絞り出した。
 清水の大熊清ゼネラルマネジャー(58)は来季もゼ・リカルド監督(51)の続投を説明した際に、クラブの具体的な進路を示すことはなかった。強化責任を問われた自らについても「続けることが精いっぱいの責任」と曖昧な説明に終始した。
 2クラブに共通するのは、クラブとしての方向性の欠如だ。毎年のようにシーズン途中で監督が交代し、そのたびに志向する戦い方にぶれが生じる。磐田のMF山田大記(33)がはき出した「長期的な視点も短期的な結果(残留)も得られず、何も残すことができなかった」という言葉が重く響く。
 来季はJ3から昇格した藤枝MYFCを加え、県勢3クラブがJ2で戦う。超攻撃的サッカーを掲げる藤枝の須藤大輔監督(45)は「今の序列を崩したい」と鼻息は荒い。来季のJ2は、伝統クラブがプライドを守るのか、新顔が勢力図を塗り替えるのか。静岡サッカーの未来を左右する年になりそうだ。

 <メモ>J1清水エスパルスが17位、ジュビロ磐田が最下位の18位と低迷、来季J2降格が決まった。Jリーグ発足以来2クラブがそろってJ1から消えるのは初めて。来季はJ3から昇格した藤枝MYFCを加え、県勢3クラブがJ2で戦う。

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