介護助手にシニアの力 静岡県内施設、働きやすく業務細分化の動き 体力必要な仕事は専門職に/朝と夕方2時間ずつ勤務

 人手不足感が強い介護施設で高齢者を「介護助手」として活用するため、勤務時間帯や仕事内容を細分化する動きが県内で広がっている。体力などに懸念のある高齢者でも、働きやすい環境をつくるのが狙い。80代で働くケースもあり、シニア層の雇用の受け皿としても期待されている。

利用者に提供するお茶にとろみをつける介護助手の滝浪陽子さん=昨年11月、静岡市葵区の特別養護老人ホーム「竜爪園」(写真の一部を加工しています)
利用者に提供するお茶にとろみをつける介護助手の滝浪陽子さん=昨年11月、静岡市葵区の特別養護老人ホーム「竜爪園」(写真の一部を加工しています)

 「介護の仕事は大変だというイメージがあったが、仕事の仕方を工夫すれば問題ない」と話すのは、静岡市葵区の特別養護老人ホーム「竜爪園」に勤める滝浪陽子さん(72)。長年勤務した幼稚園や保育園を62歳で退職し、現在は介護助手として食事の配膳や食後の歯磨きの手伝いなどを担当する。食事の際に誤嚥(ごえん)防止のとろみをつけるなど個々の利用者に気を配る一方、体力の必要な仕事は専門的な資格を持つ若い職員に任せる。
 勤務時間も細かく設定されている。滝浪さんは朝(午前8~10時)と夕方(午後4時半~6時半)の1日2時間ずつ、週4日間勤務する。「時間が短いので体力的には問題ない。周囲の職員とチームで動くので充実感がある」と笑顔を見せる。
 同施設の田口潤事務長は「朝夕は人手が必要な時間帯だが、子育て世代の職員は対応が難しく、時短勤務の高齢者にお願いしている」と説明。サービスの質を確保するため、パート勤務者への賞与支給など待遇改善にも力を入れているという。
 介護助手として高齢者を採用しようとする介護事業者は県内で少なくない。昨年12月下旬、シニア向け就職相談会にブースを出した富士宮市の特別養護老人ホーム「星の郷」の土井正孝施設長は「介護施設で働くと介護制度の知識を身につけられるので、自身の親族の介護にも役立つ」と魅力をアピールした。
静岡の協議会 高齢者活躍の業種「介護」を重点支援
 官民の団体で構成する静岡市の協議会は本年度、全国のモデル事業として高齢者の活躍支援に向けた戦略を策定し、「警備・清掃」や「ボランティア」の分野とともに「介護」を重点業種に位置付けた。
 3K(きつい・汚い・危険)の先入観を払拭するため、仕事紹介パンフレットのデザインを刷新するなど業界の魅力を発信。介護助手の導入を推進する県とも連携する。市保健福祉長寿局の池田陽平次長は「(人手不足で)求められる分野のため、自分に合ったシフトを組んでもらいやすい」と利点を強調する。
 市のシニア層向け就労支援窓口「ネクストワークしずおか」の一ノ宮由美マネージャーは「シニア雇用のモデルになり得る業界」と期待を込める。
 

 介護助手 資格はなく明確な定義や位置付けもないが、一般的には、入浴や排せつなど専門性の高い身体介護を担う専門職とは別に、配膳や清掃、洗濯など軽作業の生活援助を担う介護人材を指す。国や県は慢性的な人手不足の緩和や専門職の負担軽減を狙って導入を促している。ただ、「単なる作業ではない」として「介護助手」という呼称の変更やサービスの質の確保を求める意見もある。

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