記者コラム「清流」 爪痕は「見えない部分」に

 台風15号で大規模な浸水被害に遭った静岡市清水区に足を運んだ。被災から3カ月後、道路に散らばった泥だらけの衣服や家具は撤去され、コインランドリーから行列は消えていた。港町は日常を取り戻したかのように見えた。
 だが取材に入ると、すぐに思い違いだと分かった。その日は災害ボランティアの指揮をとる支援団体に同行した。70代女性の自宅は1階の断熱材や壁下にカビが生え、修理のために柱がむき出しになっていた。2階での生活に「上り下りがつらい」とうつむいた。土が薄く残るアパートで生活保護を受給しながら暮らしをつなぐ60代男性は「死んだ方が楽かも」と漏らした。
 取材を通して見て聞いて、復興には時間がかかると感じた。「見えない部分」に台風の爪痕はまだ残っていた。

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