記者コラム「清流」 「夕刊」通じた交流

 子どもの頃、親しくしてもらった新聞配達員のおばさんがいる。放課後、家の前で遊んでいる私の名前を呼び夕刊を手渡してくれたのを覚えている。新聞受けから取り出すのではなく、直接受け取るのがうれしかった。
 おばさんは猫のえさを持っていたので、バイクの音を聞きつけた地域猫がいつも寄ってきていた。夕飯作りの手を休めた近所の人たちも顔を出し、しばし談笑するというのが夕方の懐かしい光景だ。
 本紙夕刊は3月末で廃止に。人々が寝静まる夜中に配達する朝刊と違い、夕刊は配達員と交流できる。幼い頃の私が新聞を身近に感じたのもおばさんのおかげだったのかも。地域交流の場面が一つなくなるのは社員としては申し訳なさを感じ、個人としてはやはり寂しさが残る。(掛川支局・伊藤さくら)

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