高校生サッカー審判員成長中 夢はJ1、W杯 静岡県協会、競技発展へ育成に力

 サッカー王国再建は審判育成から―。静岡県サッカー協会がユース世代の審判員育成に力を入れている。静岡県の18歳以下の3級審判員は52人(1月末時点)で、全国で2番目に多い。関係者は「試合には必ずレフェリーが必要。優秀な人材を数多く育て、競技人口の裾野拡大につなげたい」と意欲を高める。

オフサイド判定について実技講習を受ける高校生審判員ら=静岡市駿河区の草薙球技場
オフサイド判定について実技講習を受ける高校生審判員ら=静岡市駿河区の草薙球技場

 フラッグを持ち、ライン沿いを疾走する高校生審判員たち。2月上旬、静岡市駿河区の草薙球技場には22歳以下で3級資格を持つ審判員が集まり、オフサイド判定について実技講習を受けた。同市葵、駿河両区を管轄する中部支部が3年前から年6回実施する勉強会の最終回で、支部の垣根を越えてユース審判員が参加した。
 「正確な判定には正しい位置取りが大事」。講師を務めたのは2021年まで最高資格の国際審判員として実績を積んだ唐紙学志さん(44)。10人ほどのスタッフが選手役を担って試合での際どい場面を再現し、受講生は自分が下した判定が正しいか映像で確認を繰り返した。
 審判員は1~4級に分かれ、試合を主催する協会の規模で必要な資格が異なる。高校生審判員が目指すのはJリーグ1部(J1)、そしてW杯の舞台。清水東高で控えGKだった池田遼介さん(3年)が「責任重大だが、試合をコントロールするのが面白い」と笑顔を見せれば、中学時代の大けがで選手を断念した丸田一翔さん(静岡北高3年)も「ずっとサッカーに関わりたいと審判を選んだ。2級、1級、国際資格と上を目指したい」。2人とも進学後も審判員を続ける決意を固めている。
 史上初めて清水、磐田が同時にJ2降格し、静岡の存在感低下が懸念されている。1級資格を持ち、現在もJ1で副審を務める唐紙さんは「審判のレベルが上がれば、選手はプレーに集中でき技術も向上する」と指摘した上で「国内外で活躍するレフェリーを育て、静岡のサッカーを発展させたい」と情熱を燃やす。

 ■選手並みの走力も必要
 静岡県で1級資格を持つ審判員は9人(全国212人)、女子1級は2人(同53人)と狭き門(2022年4月現在)。資格取得には学科と実技の試験だけでなく、体力テストでインターバル走と短距離走を行い、選手並みの走力が求められる。
 県サッカー協会審判委員会は各種の研修会開催に加え、高校生審判員をU-12(12歳以下)県大会決勝などに派遣して経験を積ませている。渡辺裕年委員長(61)は「トップクラスの人材を輩出するのと同時に、審判員として生涯に渡って競技に関わるサッカーファミリーを増やしたい」と方針を示す。

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