盛り土規制の範囲 安倍・藁科川表示せず 静岡県ウェブ地図「特殊な指定が理由」

 静岡県が安倍・藁科川上流域で砂防法に基づく盛り土規制区域「砂防指定地」の範囲をインターネット上の範囲確認用の地図に表示していなかったことが20日までに分かった。広範囲におよぶ特殊な指定(面指定)であることが理由という。担当部署に問い合わせなければ範囲が分からない状態が藁科川流域の巨大盛り土造成問題を受けても数年間続く可能性がある。

砂防指定地(水色)を表示する県地理情報システム。日本平など平野部周辺は記載があるが、安倍・藁科川上流域は表示されない。左は実際の広域な砂防指定地の図
砂防指定地(水色)を表示する県地理情報システム。日本平など平野部周辺は記載があるが、安倍・藁科川上流域は表示されない。左は実際の広域な砂防指定地の図
砂防指定地
砂防指定地
砂防指定地(水色)を表示する県地理情報システム。日本平など平野部周辺は記載があるが、安倍・藁科川上流域は表示されない。左は実際の広域な砂防指定地の図
砂防指定地

 安倍・藁科川上流域の砂防指定地が表示されない状態になっているのは静岡県のウェブサイト「県地理情報システム(GIS)」。砂防法や森林法などさまざまな規制区域を地図上に表示して範囲を確認できる仕組みで、熱海土石流で問題になっている逢初川など、特殊指定ではない県内各地の中小河川の砂防指定地は表示される。
 県関係者によると、静岡市葵区日向、杉尾地区の巨大盛り土を巡って県警の摘発を受けた業者は以前から砂防指定地を認識していたとみられるが、砂防指定地と知らずに違反行為をしていた事業者もいたという。
 県の砂防部局は「紙の地図で範囲を確認していた」とするが、森林法の伐採届などを受け付ける静岡市は担当職員の一部が範囲を認識できていなかった可能性があるという。
 県砂防課は「安倍・藁科川上流域の砂防指定地は、ネット上で表示する際に農地や宅地を除外しなければならず、システム上、うまく表示できない。新年度に十分な予算額が確保できず、表示できるまでに数年間かかる」と説明している。

 地質もろく広域に明治時代から存在
 静岡市葵区の安倍・藁科川上流域にある開発規制区域「砂防指定地」は、大規模な水害が発生した明治時代に定められた特殊な指定(面指定)。国が指定基準を策定した1989年よりも前から広域に指定され、その範囲は見直されていない。
 県砂防課によると、明治時代は木炭生産などによる森林伐採で山腹が荒廃し、土砂災害につながったため指定された。その後の植林で荒廃状況は改善されたものの、安倍川最上流部には大規模崩壊地「大谷崩れ」があり、安倍川は勾配がきつい急流なため、広範囲の指定のままだという。同様の特殊指定は県内で他に瀬戸川上流域(藤枝市)があるが、今もインターネット地図に表示されない。
 指定基準に合わない地域が含まれているとして範囲の見直しを求める声もあるが、県砂防課の杉本敏彦課長は「流域に複数の大規模な断層帯があり、地質が非常にもろい」と広域指定の必要性を強調する。

 <メモ>砂防指定地 上流域の土砂が流出して下流域の土石流や水害につながる開発行為を抑制するための規制区域。砂防法に基づき県が範囲を申請し、国が決定する。区域内で盛り土や切り土(地盤の掘削)、森林伐採、土砂投棄などを行う場合、県の許可が必要になる。明治時代の砂防法制定当初から指定制度はあったが、区域を指定する基準は1989年に国が定めるまで、明確になっていなかった。
 

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