砂防指定地のウェブ地図非表示問題 森林法の盛り土規制区域も 「修正めど立たず」

 砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」が表示されず問題になっている静岡県のウェブサイト上の地図を巡り、森林法の盛り土規制区域「保安林」も表示されない状態が続いていることが1日、県への取材で分かった。熱海土石流後に実際の区域指定と異なる範囲がウェブの地図に掲載されていたことが判明し、約1年8カ月間、表示を取りやめているという。県によると、他の箇所も含めた修正作業に時間がかかり、表示できるめどは立っていない。
 問題のウェブサイトは「県森林情報共有システム」。砂防指定地の場合は特殊な広域指定の安倍・藁科川上流域だけで非表示だが、保安林は県内全域で表示されていない。
 県森林保全課によると、ウェブサイトの熱海土石流で崩落した盛り土付近で保安林が誤表示されていたことをきっかけに表示を中止した。明治・大正時代に作製された保安林の図面の精度が低く、他の場所でも図面と実際の土地の境界が異なるケースが見つかったという。図面の修正作業がいつ終わるのかは不明で、修正が必要な箇所数も「分からない」と説明している。
 保安林の区域を知りたい場合は各地の農林事務所を直接訪れ、台帳の閲覧手続きを取る必要があるという。同課の担当者は「表示されなくても問題は生じていない」とコメントしている。(社会部・大橋弘典)

 保安林 森林法に基づき、水源の涵養(かんよう)や土砂流出防止などの目的に沿った森林の機能を確保するため、森林伐採や開発行為が規制される区域。都道府県が指定する。盛り土行為は都道府県の許可が必要で、厳しい要件が課される。林地開発許可の対象の規制区域「5条森林(地域森林計画の民有林)」よりも規制内容が厳しい。

所管外法令の職員研修検討 県議会委で農水部長
 砂防指定地にある森林の大規模伐採に必要な砂防許可の要件が森林部局の職員に十分周知されていなかった問題を巡り、県の桜井正陽農林水産担当部長は1日の県議会産業委員会で、「(森林部局以外の部署が扱う)関係法令についても認識を深める職員研修が重要だ」と述べ、熱海土石流を教訓とし、森林部局の職員を対象に所管外の法令の概要や手続きを学ぶ研修を検討する考えを示した。
 ふじのくに県民クラブの阿部卓也氏(浜松市浜北区)への答弁。
 県では毎年度、部署別に研修を実施しているが、所管する法令を学ぶのが基本。盛り土問題では、伐採届を担当する市町が県砂防指定地管理条例の許可要件を知らず、対応が遅れる事例もあった。
 桜井部長は「他部署で所管する法令の認識が低い」とした上で、所管外の法令を学ぶ研修について「検討を進めていきたい」と述べた。

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