熱海盛り土 所有権移転後も土砂搬入 掘削試料に放射性物質 静大教授ら分析

 熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流を巡り、静岡大などの研究グループは17日、11年3月の東京電力福島第1原発事故で飛散したとみられる放射性物質が、土石流起点付近にある盛り土の地下約2メートルで検出されたと発表した。現土地所有者に盛り土の所有権が移った11年2月以降も土砂が運び込まれ、盛り土が続いていたことが科学的に裏付けられたとしている。

熱海土石流の起点になった盛り土崩落部周辺
熱海土石流の起点になった盛り土崩落部周辺


 同大の北村晃寿教授(古生物学)が記者会見して明らかにした。
 研究グループは、崩落せずに残った盛り土の一部を静岡県が21年8月にボーリングした際の地質試料(コア)を分析。ボーリングした4カ所のうち2カ所で、放射性物質のセシウム134を検出した。
 北村教授は、セシウム134は原発事故以外で自然界に放出されることはないとし、原発事故の起きた11年3月時点で既に造成されていた盛り土の表面に付着したか、セシウム134を含んだ土砂が11年3月以降に外部から持ち込まれて盛り土されたかのどちらかになると説明した。
 現所有者は昨年5月、市議会調査特別委員会(百条委員会)で「盛り土の認識はなかった。段々になっている敷地に木を植えたことはある。土砂搬入をしたことはない」と述べた。市によると、11年3月に現所有者の関係会社から前所有者が盛り土周辺に土砂搬入を再開したとの連絡があった。市の担当者は昨年6月に市議会で「現所有者は、前所有者の土砂搬入を認識していたと考える」と答弁している。
 研究グループは、今後、県による撤去工事が進む盛り土の斜面でセシウム134の分布状況を調査し、11年3月以降の盛り土の範囲を明確化したい意向も示した。

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