静岡・日向の盛り土 2006年に指導も 罰則弱く、是正応じず 県は厳罰化せず放置

 静岡市葵区日向地区の開発規制区域「砂防指定地」内の無許可盛り土を巡り、造成した残土処分会社が2006年に県から是正指導を受けた際、県砂防指定地管理条例の罰則の弱さを理由に対応しなかったことが25日までの取材で分かった。県はその後、厳罰化せず、熱海土石流の原因とされる同時期の開発行為に砂防条例を適用していない。一方、14年に盛り土崩落事故が起きた大阪府は翌15年に条例を改正して罰則を強化していた。

砂防条例を巡る静岡・日向の盛り土造成と熱海土石流の経緯
砂防条例を巡る静岡・日向の盛り土造成と熱海土石流の経緯

 県は06年1月、砂防条例に基づき「一刻も早い是正に向けて、話し合いに応じられたくお願い致します」と記した文書を同社に送付。危険状態を放置した場合の対応も「1年以下の懲役または2万円以下の罰金に処する」と砂防条例の罰則を引用して記載した。
 静岡土木事務所によると、この文書に対する業者の反応について、当時の担当者は「『罰金2万円を払えばいいんだろ』と言われた。罰則が弱いから業者が言うことを聞かない」と話していたという。静岡市が県と協議した際に作った公文書にも「(同社が)『罰金2万円くらい払ってやる』と言って開き直っている」と県の見解が記されていた。
 土砂搬入は続いたが、県は内部で条例改正による罰則強化を検討せず、同社は近くの杉尾地区にも無許可で盛り土を造成した。
 14年の大阪府の盛り土崩落事故は人的被害がなかったが、府は行政対応を検証。15年に条例で可能な上限まで罰則を引き上げた。
 熱海土石流の起点になった逢初川上流域は07年ごろに開発が本格化し、土砂が流出していた。県関係者の間には「罰則が弱く実効性がないため、砂防条例を適用しなかった」とする見方もあるが、県河川砂防管理課は「一般論として罰則が弱いことが条例を適用しない理由にはならない」と説明している。

 砂防指定地管理条例 土砂流出の恐れがある砂防法の規制区域「砂防指定地」で、土砂流出を抑えるためにどのような行為を制限するのか、都道府県ごとに具体的に定めている。本県は森林伐採や盛り土、切り土、土砂投棄などをする場合に県の許可が必要になる。罰則内容も、砂防法ではなく条例で都道府県ごとに決めている。

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