憎い敵/かわいい弟「とどめは家康に」【今川氏真役・溝端淳平インタビュー 大河ドラマ編】

大河ドラマ「どうする家康」で、駿河・遠江を治めた今川氏真を演じる溝端淳平。掛川城を舞台に徳川家康と攻防を繰り広げた末、戦国大名・今川氏が滅亡した場面の心境や舞台裏を聞いた。
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家康に1発で敗れる
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家康が最後現れて、目が合って1発で敗れる。満身創痍(そうい)の氏真だから一瞬で決着がつきますけど、ほっとしている自分がいました。反撃する気もなかったし、ただただ確かめたかった。もう一回向き合いたかったという意味の対峙(たいじ)だった。
松本(潤)くんとのシーンは結構コミュニケーションを取ってお芝居をつくっていくことが多かったんですけど、あのシーンに関してはほとんどしゃべらなかったですね。本当にお芝居で通じ合うだけというか。

氏真は早く乱世から下りたかったんだろうと思います。(辞世の句として知られる)「なかなかに 世をも人をも 恨むまじ 時にあはぬを 身のとがにして」というくらい、才能にも時代にも恵まれなかったので。

憎き家康、裏切り者、おまえのせいで人生狂ったんだぞと思っていた。でも、憎い敵だけじゃない。幼少期からの良い思い出もたくさんある。本当にかわいい弟だったと思うし、手を取り合って今川を繁栄させるぞって本気で思ってた仲だった。やっぱり、とどめは家康につけてほしかった。

人に弱み見せられない弱い人間
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氏真はすごく弱い人間なんですよ。人に弱みを見せられない。自分がストイックにやればやるほど、周りに人がいなくなっていく。人を信じられなくなるっていうぐらい、心が不安定なので。
(家康と氏真は)ずっと対照的に描かれている。自分では望んでいないものの、天に選ばれどんどん出世する家康。望んでいるが、才能と時代に見放され、もやは家臣も誰もいなくなってボロボロになって1発でやられてしまう氏真。かつて兄と呼んでいた人が、地べたをはいつくばって自決しようとする。あまり拮抗(きっこう)した戦いにならない方が良いという狙いもあったと思います。

戦国の世でなければ、仲良く同じ目標に向かってまい進できた関係性なのになって、物悲しさ、戦乱の世を恨むべきだというような感情になります。

苦しみまくる時代を演じなきゃと思ってやってるんですけど、それができるのも最終的には、きっと救いがある役だって信じているから。演じるにあたり、観泉寺(東京都)へ墓参りに行かせていただいて。氏真と正室の早川殿のお墓が仲むつまじく並んでいるのを見て「愚将」「今川を滅ぼした」とか言われているけれど、この人たちはなんか幸せだったんだろうなって感じたんですよね。父上だったり、早川殿だったり。こんなに人に恵まれてたんだなって。テーマは家族愛ですね。

「家康、そこでまだまだ苦しめ」
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毎回役者の持ってるものとか感情を振り絞って、全部出すっていうくらい、ストイックにやらせていただけてありがたかったですね。回想のシーンでは木刀を3本折りました。

僕も氏真に共感できる部分がありました。20代の頃は、認めてもらえないっていう孤独感があったので。結果的に周りの人に恵まれて、ちょっとずつ「できる」を積み重ねていけば良いじゃんっていう風に思えて。それが氏真につながったんですよね。

やっぱり大谷翔平さんとか佐々木朗希さんとか。ああいう風になりたいと思って、でもなれない人も多いじゃないですか。なれない人に悩みはいっぱいあるし。でも、なれたらなれたでずっと悩みがある。そこに僕は感動したというか。メッセージとしてばっちり伝わってくる。
家康。そなたはまだ下りるな。そこでまだまだ苦しめ。才能がない者はないなりにこれからも悩むけど、おまえは選ばれし者だから、そこで苦しまなきゃいけないんだよ。

家康がよく分かる 正室・側室/人柄/戦い
?特設サイト「静岡人必読 今さら聞けない 徳川家康」

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