小学生、荷物が重い!! 「置き勉」浸透道半ば 教科書と端末 併用影響

 小学生の通学の荷物が重い。心身への影響を懸念する声を受けて近年、教科書を学校に置いて帰る「置き勉」などの対策が県内でもある程度進む。一方、GIGAスクール構想で整備された電子端末の持ち帰りをはじめ、荷物が重くなる事情も新たに加わった。児童や保護者からは負担の訴えと諦めの声が入り交じる。

女児のランドセルの中身。「PCが増えてすごく重くなった」と語る=3月中旬、県内
女児のランドセルの中身。「PCが増えてすごく重くなった」と語る=3月中旬、県内


小学5年生、ある日の荷物 7.3キロ  教科書やノート計14冊、ノートパソコン(PC)、水筒。3月中旬、県中部の小学5年の女児にランドセルの中身を見せてもらった。ランドセル本体を含む重さは計7・3キロ。女児の学校では国語と算数以外の教材は「置き勉」可能だが、軽い日でも6キロ弱ある。中でも重いのは、1・6キロのPC。授業で使う日は持参し、当日持ち帰る決まりだ。宿題や突然のリモート授業で使った経験があり、持ち帰りの必要性は感じているという。でも、「重くて肩がちぎれそう」(女児)。
 小学生の荷物の重さは以前から、問題視されてきた。保護者らの声を受けて文部科学省は2018年、「置き勉」など、配慮を求める通知を全国の教育委員会に出した。
 県内全35市町の教育委員会に尋ねたところ、「置き勉」を禁止していると回答した市町教委はなかった。ただ、具体的な対策は学校に委ねられている。県内の保護者からは「『お道具箱を空にして帰って』と指導されている」「わが子は全教科を持ち帰ってくる」などの声も。「置き勉」浸透は道半ばのようだ。
 文科省は当面、紙とデジタルの教科書を併用する方針で、家庭学習での端末活用も呼びかけている。県内でも学校により対応が異なるが、端末を持ち帰る事例も少なくない。
 学校用品を製造する企業「フットマーク」(東京都)が全国の小学1~3年の親子1200組を対象に昨年行ったインターネット調査によると、ランドセル本体と中身の合計の重さは平均4・28キロで、同様の前年調査の3・97キロより重くなった。背景には端末と教科書の併用があるという。調査では、回答した児童の9割超が荷物を重いと感じていて、うち3・5人に1人が体の痛みを訴えた経験があると回答した。
 文科省は昨年11月、全国の教育委員会への通知で、端末で撮影した教材の画像データを使えば、家庭で使う教材も「置き勉」が可能になると示した。
 試しに小5の女児に教科書を撮影してもらった。「読めなくはない…」と差し出された画面はぼやけ、文字判別は難しかった。女児の母親は「端末の性能にもよると思うが、特に低学年には撮影データでの宿題は難しそう」とぽつり。「紙の良さもある。端末学習の意義も感じる。デジタル化の過渡期で負担は仕方ないのかな」

荷物は背中側に・固定ベルト活用/医師に聞く 家でできる対策
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 子どものために家庭でできる対策は。たかの整形外科の高野勇人院長(45)=東京都、元富士市立中央病院勤務=に聞いた。
 重い荷物により、筋肉痛や肩こりなどの身体的症状に加え、通学を憂鬱[ゆううつ]に感じるなど気持ちにも影響する症状は「ランドセル症候群」と呼ばれ、児童の心身の発達へのリスクが指摘されている。
 荷物の重さは一般的に、体重の10%程度が望ましいとする米国の研究もある。小学1~3年生の平均体重は25キロ前後。通学かばんの重さは2・5キロ以下が適切と考えられる。
 負担軽減のポイントは、ランドセル内で荷物を背中側に固定する「後ろ重心の防止」。タオルなど軽い物を入れ、荷物が揺れないようにすると良い。肩ベルトのこまめな調節やチェストベルトの活用により、身体の後ろ側にかかる負担を前側に分散させる「肩にかかる力の分散」も有効。
 宿題はプリントにする▽持ち帰りは本当に宿題で使う物だけに絞る―など、学校側にも工夫の余地はあるはずだ。
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