パートナーシップ宣誓制度導入も… 行政運用に差、改善を 静岡県内関係者、理解促進期待

 LGBTをはじめ性的少数者の権利について、国会などの議論が煮え切らない中、同性や事実婚カップルの関係性を公認する県の「パートナーシップ宣誓制度」が3月から始まった。だが、多様性を認める流れとは裏腹に、利用カップルの在り方によって対応に差が生じかねないなど、平等を求める声も上がる。関係者は「制度ができても、理解不足などから運用が行き届いていない面がある」と指摘し、統一地方選を機に改善の議論を期待する。

多様な夫婦の形があることを訴えようと県の宣誓制度を利用した加藤千恵子さん(左)と山本海行さん=3月中旬、浜松市中区
多様な夫婦の形があることを訴えようと県の宣誓制度を利用した加藤千恵子さん(左)と山本海行さん=3月中旬、浜松市中区

 3月下旬、静岡市の中小企業に勤務する男性(31)は付き合って9年になる同性パートナー=静岡県東部=と県の宣誓制度の認定を受けた。上司には報告済みで、「周囲の人に恵まれた」と感じる一方、「性的少数者を受け入れられない上司が1人でもいたら、報告できなかったかも」と漏らす。
 認定により、法的には結婚を認められないカップルが公営住宅入居などの際に家族と同様とみなされる。男性は「行政から、民間の理解を促す働きかけがあれば、企業などへの浸透が深まるはず」と期待する。
 夫婦別姓を希望し、事実婚を選択したカップルもいる。浜松市の高校教員加藤千恵子さん(54)と一昨年まで教員だった山本海行さん(62)は3月、県の宣誓制度の認定を受けた。「教師として、さまざまな夫婦の形を示したい」と語る。
 2人は3年前、同市の宣誓制度の認定を受けた。ただ、当時の勤務先で結婚休暇を申請した際、県教委に「(異性の)事実婚ならよいが、同性カップルは利用できない」と回答され、釈然としなかった記憶が鮮明に残る。加藤さんは「県の制度ができて、理解が進んだのかどうか」と心配しつつ、「愛し合う2人に同性も異性も関係ない。カップルの形で対応に差があるのはおかしい」と憤る。
 静岡市の20代の女性公務員は昨夏、市の宣誓制度を踏まえて結婚休暇や祝い金を上司に相談した際、「結婚関連の制度を利用するには周囲に(同性パートナーがいることを)カミングアウトする必要がある」と説明され、困惑した。勇気を振り絞って打ち明け、順調に進むことを少しは期待していただけにショックはあった。「自分たちはまだ社会に認められていないのでは」と唇をかみしめた。

性的少数者らへの支援少なく 関係者 民間との連携提案
 県や静岡市など一部の自治体を除き、性的少数者らの相談窓口を設置している市町は少ない。県中部を中心に当事者支援を行う「しずおかLGBTQ+」によると、背景には相談員の不足などがあるようだ。行政と大学などの有識者や医療・福祉分野の有資格者らを結びつけ、人材育成を図りながら、地域の実情に沿った独自の支援チームを設けるのが理想的な形という。
 同団体代表理事の細川知子さんは自治体に対して、「裁量の範囲内で法律婚と同様のサービスを利用できるように運用面を改善する積極的な姿勢を示してほしい」と願う。その上で「行政と支援団体の活動だけでは限界があると思う。企業や大学、住民などが連携するプロジェクトを企画してみては」と提案する。

 パートナーシップ宣誓制度 静岡県内では浜松、富士、静岡、湖西市に続き、県が3月から導入した。同月末現在で宣誓したのは県の制度が22組、4市で計100組余に上る。公立病院の入院や面会、公営住宅入居などの際に家族と同様とみなされる。自治体などによって職員の結婚、介護休暇を受けられるケースとそうでないケースがあり、理解や運用に差が生じている。

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