シニア人材は「即戦力」 人手不足で活用注目 富士の企業、技能見える化し派遣

 人手不足を背景に50~70歳代のシニア層の人材活用に注目が集まる中、富士市の人材派遣会社「アイ・ブロード」がシニア層に特化した人材派遣事業に取り組んでいる。シニア人材から経験を丁寧に聴き取って役立つ技能を引き出し、人手不足に悩む企業に即戦力として送り出している。担当者は「経験やスキルが明確になるとマッチングしやすい」と説明する。

派遣先で配電盤の図面を作成する長田淳さん(右)。即戦力として活躍する=2月下旬、沼津市
派遣先で配電盤の図面を作成する長田淳さん(右)。即戦力として活躍する=2月下旬、沼津市

 配電盤を製造する「誠電機」(沼津市)に昨年7月から派遣されている長田淳さん(64)=裾野市=はパソコンで設計図を作る。電気関係の仕事が長く「体力的にも問題ない。60代のうちは働き続けたい」と意欲を燃やす。求人を出しても手応えがない状態が続くという誠電機の杉山周彌社長(70)は「長田さんは経験を積んでいるのでのみ込みが早い。即戦力になってくれた」と喜んだ。
 アイ・ブロード社がシニアに特化した人材派遣を始めたのは昨年1月。シニア人材の場合はスキルの把握が重要で、担当者の大石祥司部長は既に50人以上のシニア人材を面接し、経験を丁寧に聞き出した。「履歴書の記載が少なく、役立つ経歴を自覚していなかったり、資格を活用できていなかったりする人が多い」と明かす。履歴書とは別の職務経歴書(キャリアシート)の作成支援を通じ、どんな仕事ができるのかを細かく可視化する。
 シニア層以外も派遣しているが、現在は全体の約半数に当たる41人が50、60代。仕事内容はコンピューターを使うシステム開発やフォークリフトを扱う倉庫業などが中心で、3~6カ月に1度、契約を更新し、企業側と相談しながら働きやすい環境に配慮する。アイ・ブロード社は今後、資格や技能のあるシニア人材の需要はさらに高まるとみている。

「活躍し自信を」 アイ・ブロード創業者上柳さん

  photo03 創業者の上柳正仁さん
​ 人材派遣会社「アイ・ブロード」を創業した上柳正仁社長(54)=富士市=は、定年退職後も派遣社員として活躍するシニア層の姿を見て「セカンドキャリア(第二の人生)を支援したい」とシニア向け事業に着目した。
 創業以来、人材派遣事業を続けてきたが、派遣社員の中に70代でも仕事を続ける人がいた。自身のセカンドキャリアも念頭に置き、「シニアにはもっと活躍できるフィールドがある」と考えた。
 企業側には「人材が必要な期間や業務は限られる」「正規雇用は負担が大きい」、シニア人材側は「技術や経験を後世に残したい」「お金よりやりがいがほしい」という傾向があると説明する。
 シニアの人材派遣は企業と人材がお互いにメリットを享受できると強調し、「年齢が高くても働くことができる。シニアにもっと自信を持ってもらえる事例を作りたい」と思いを込める。

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