浜松PET診断センター 設立20年 がん検診で実績、脳分野に生かす 認知症や自閉症研究深化へ

 浜松光医学財団(理事長・晝馬明浜松ホトニクス会長)が浜松市浜北区で運営する浜松PET診断センターが、認知症をはじめとした脳研究を強化している。同センターは4月に設立20年を迎えた。長期にわたって蓄積してきた3万件超の検診データを活用し、設立当初から取り組むがん研究とともに、予防医学の研究を深化させる。

新型の頭部用PET装置を用いた脳研究について語る浜松光医学財団の岡田裕之常務理事=3月下旬、浜松市浜北区の浜松PET診断センター
新型の頭部用PET装置を用いた脳研究について語る浜松光医学財団の岡田裕之常務理事=3月下旬、浜松市浜北区の浜松PET診断センター

 財団は2002年、PET装置の心臓部となる検出器などを手がける浜ホトが設立した。翌03年にセンターを完成させ、社員を対象に研究を開始。一般受診者を含め、本人同意を得て検診データを集めてきた。
 22年までに累計3万6千件以上の検診を実施し、420例のがんを発見した。19年までの10年に及ぶ追跡調査では、PET検診を受けた集団と受けていない集団を比較し、受けた集団はがん致死率が約5分の1の4・8%、がんによる医療費は200万円以上抑制できた―などの集計をまとめた。一連の調査はPET検診の有効性を示す追跡調査として、国内外から高い評価を受けた。
 浜ホトの執行役員を兼ねる同財団の岡田裕之常務理事は、3万件超のデータについて「他の研究に応用できる希少な成果。人工知能(AI)を使い、認知症などになる可能性を示す将来予測サービスの開発につなげられる」と強調する。
 装置関連では、同じ敷地内の浜ホト中央研究所と連携し、22年には頭を固定せずに高精度で検査できる新型の頭部用PET装置を開発した。認知症や自閉症の新たな研究を近く、本格化させる。
 一方、PET検査の有効性は高いものの、装置は高額で、導入は大規模な医療機関などに限られている。岡田常務理事は「装置やシステムを工夫し、将来的には、より安価に、地域のクリニックでも扱えるようにしたい」と見据える。

 PET検査 ブドウ糖に似た放射性薬剤を体内に投与し、細胞の活動の様子から異常を見つける検査。がん細胞はブドウ糖を多く取り込む性質があり、体の広い範囲でがんの有無などを調べられる。脳検査では、認知症に特有な部位の代謝の低下などを調べる。浜松ホトニクスはPET用光検出器の世界トップシェアを誇る。

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