「Xジェンダー」当事者 浜松の久米さん団体設立 性的少数者の支援始動、専門家に橋渡し

 浜松市南区の久米泰代さん(42)が4月、LGBTQなどの性的少数者を支援する団体「QUEBEC(キュベック)」を本格始動させた。性的少数者の分類の一つで、性自認が男女どちらでもない人などを指す「Xジェンダー」当事者の久米さんは支援体制が整っていない県内の現状に「自分と同じ悩みを持つ人に寄り添いたい」と意気込む。

カミングアウトの手順を記したフローチャートを示す久米さん(左)と山下さん=浜松市中区
カミングアウトの手順を記したフローチャートを示す久米さん(左)と山下さん=浜松市中区

 キュベックは「森の仲間たち」の意。「性的少数者も社会の一部。どんな人も森のような、一つの社会の中で生きたいように生きていいはず」と久米さんは考える。現在はメンバー3人が当事者や企業からの相談に対応する。内容に応じ認定心理士や弁護士などの専門家、LGBTQに理解があり当事者が安心して接することができる企業に関する情報なども紹介する。
 メンバーの山下良子さん(45)は「性的少数者の支援体制は十分ではなく、情報も得にくい」と語る。静岡市など一部の自治体に窓口はあるが、気軽に相談できる環境はまだ少ない。
 相談は多岐にわたる。同性同士で結婚指輪を購入する際の周囲の視線や、保険など人生設計への不安、遺産相続や不動産賃貸といった法的に関係性を認められていないカップルの悩みも見られる。常に心理的に大きな負担が伴うという。
 キュベックは認定心理士と相談を重ね、当事者が最も身近な家族にカミングアウトする際の手順をまとめたフローチャートも作成した。性の多様性への理解や親子関係などの状態を確認しながら、ステップを進める。家族へのカミングアウトに苦労した経験を持つ久米さんは「当事者が自分らしく生きられる手助けになれば」と期待する。

 Xジェンダー 日本で生まれた言葉で性自認の一つ。男女以外の全ての性自認を包括する「第3の性」とも呼ばれ、人口の約1%に当たるとの見方もある。男女の中間と認識する「中性」や男女どちらの感覚も当てはまらない「無性」、性自認が流動的な「不定性」などに分かれる。2019年にLGBT総合研究所(東京)が国内の20~69歳の約35万人から回答を得たネットの調査では2・5%が該当した。

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