静岡・日向の盛り土 権限曖昧で行政処分見送り? 06年は「本庁」→10年は「土木事務所」 命令遅れ巨大化

 静岡市葵区日向の盛り土規制区域「砂防指定地」に無許可で造成された巨大な盛り土を巡り、県が2006年に残土処分会社への行政処分を見送っていた問題で、行政処分の決裁権限が不明確になっていたことが9日までの取材で分かった。権限を定めた当時の決裁規程で県砂防指定地管理条例の行政処分の項目が抜けていて、本庁と出先機関のどちらが最終判断するのか曖昧になっていた。決裁規程の不備が処分の見送りに影響した可能性があり、県は経緯を調べている。

県砂防指定地管理条例の行政処分の権限
県砂防指定地管理条例の行政処分の権限


 出先機関の静岡土木事務所の公文書によると、同事務所の職員は05年12月、本庁の担当者から「事務決裁上、行政処分の権限が事務所長にある」と説明を受けたが、06年1月、事務所側から決裁権限が本庁にあると指摘し、本庁側も同意。06年5月には、行政処分が本庁の決裁案件だと本庁担当者と最終確認したことが記されていた。
 ところが、県は10年度に出先機関の決裁規程を変更し、土木事務所長の決裁事項として砂防条例の行政処分を追加し、権限は本庁から出先機関に移った。同事務所はその後も業者による土砂搬入が続いていたことを把握していたが、行政処分に踏み切らず本庁に現場の状況を報告、協議していた。行政処分は今年4月まで発出されず、盛り土は全国最大級に巨大化した。
 県河川砂防管理課は「本庁と土木事務所は連携して対応していたと認識しているが、行政処分をなぜ見送ったのか、関係職員の聴取を進めて今後詳しく確認していく」としている。
 今月8日には業者から原状回復計画書が提出されたが、県は求める内容ではないとして工事着手期限の19日まで状況を見極めるという。

 行政機関の決裁規程 許認可手続きや行政対応など、職務上の事務処理案件について最終判断する責任者が誰なのか、法令ごとに細かく定めた庁内のルール。部長や課長、事務所長などと職位に応じて内容が異なり、重要な案件ほど上位の人が決裁する。

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