元教員が環境整備、沼津で中学生軟式野球クラブ始動 部活地域移行

 中学校部活動の指導を地域クラブに委ねる「地域移行」。国は少子化対策や教職員の負担減を目的に本年度からの3年間で休日部活動の地域移行達成を目標に掲げているが、指導者不足や場所の確保など課題は山積する。県内でも取り組みが始まる中、沼津市では元教員が受け皿として軟式野球クラブ「沼津フェニックス」を立ち上げ、4月から本格始動した。

軟式野球クラブ「沼津フェニックス」の入団式=3月下旬、沼津市
軟式野球クラブ「沼津フェニックス」の入団式=3月下旬、沼津市

 市内18の中学校のうち、野球部があるのは14校。昨年はその半数が他校との合同チームだった。背景に部活動は軟式、クラブは硬式と、中学野球の二極化があった。3月末に中学校教員を定年退職し、クラブの代表兼監督を務める内村義則さん(61)は、学校単位で単独チームが組めるのは競技によって差がある現状を目の当たりにしてきた。「安定した環境を確保し、軟式野球を頑張りたい生徒の場所を守る必要がある」と強調する。
 「違う中学校の友達ができるのがうれしい」「ホームランを打ってチームを盛り上げたい」-。3月下旬に行ったクラブの入団式で1期生となる12選手が楽しみや目標を口にした。選手らは8公立中学に通う1年生。卒業までの3年間は国が地域移行達成を掲げる期間とかぶっていることを踏まえ、自ら希望して中学部活動ではなくクラブに入った。金岡中1年の若生浩輝さんは「しっかり同じ仲間と野球をしたいから選んだ。新しいチームにわくわくしている」と目を輝かせた。
 クラブは選手の健全育成と自主・自立が目的。練習の遅刻、欠席の連絡は選手自身に委ねる。市内2中学の運動場を使用し、週4回練習に励む。母の千晶さんはクラブの理念に共感し、「小学生から頑張ってきた野球を思いっきりさせたい」との思いから浩輝さんの背中を押した。大会に出場するための移動は公共交通機関を使用するため、懸念していた送迎の負担が少ないことが後押しにつながったという。「スタッフの方からは強い教育心が伝わってくる。息子がどう成長するのか楽しみ」と期待した。
地域移行、文化系も動き 吹奏楽団新設
 沼津市内では文化系の部活動でも、地域移行対応に向けた動きがある。昨年、市内で活動する吹奏楽団が中学生を対象に楽団「沼津ブラス・フィールド」を新設した。
 地元の8中学校の生徒が月2回、練習のために集まる「地域部活動」。本年度は4人の入団があり、現在は計13人で活動している。生徒らが楽団の運営や企画を手がけ、昨年は市芸術祭に出演し演奏を披露した。
 楽団結成に尽力した沼津ブラス・フロンティアの荻野貴恵運営委員長(36)は中学校部活動の日数や練習時間が限られている点に言及し、「『もっとやりたい』という中学生のために楽団として何かできないか模索していた。吹奏楽文化を絶やさないことにもつながるはず」と話した。

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