盛り土規制法施行 危険渓流への適用必須に 熱海土石流教訓

 熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流災害をきっかけに制定された盛り土規制法が26日、施行された。集落の上流域に急勾配のある沢「土石流危険渓流」に造成された盛り土(残土処分場)が崩落して28人が死亡した大惨事を教訓に、従来は自治体の判断に任せていた土石流危険渓流の規制区域設定は必須となり、危険渓流の盛り土に厳しい規制が適用される。山間部以外でも規制区域内は「土砂の仮置き」に許可が必要になり、建設工事の元請け業者は土砂搬出先の許可確認が求められる。

盛り土規制法の特徴
盛り土規制法の特徴

 規制区域は山間部を中心にした「特定盛土規制区域」と、平地や市街地が対象の「宅地造成工事規制区域」の2種類で、今後、都道府県や政令市が基礎調査して設定する。区域内の盛り土・切り土の高さや面積が一定以上の場合に都道府県や政令市の許可が必要。
 宅地造成や残土処分場、太陽光発電施設などを想定し、自治体が工事中から排水施設の状況をチェックする。安全な維持管理は土地所有者の努力義務になり、施行前に造成された盛り土でも危険と判断すれば行政が撤去できる。営農行為は規制の対象外とした。
 特定盛土規制区域は人家や集落に向かって傾斜が下っている地形に設定。熱海土石流の起点になったような水の集まる谷への盛り土は砂防法並みの厳しい要件が課される。ただ、造成の兆候をつかみやすい森林伐採や少量の土砂投棄は盛り土規制法の対象にならず、森林法や砂防法で引き続き対応する。国土交通省の担当者は「自治体は規制の重複を恐れず関係法令を総動員してほしい」と話す。
 元請け業者による搬出土砂の追跡確認が来年6月に義務化されるのを前に、土砂を選別・改良したり仮置きしたりするストックヤード(残土中間処分場)の登録も26日に始まった。登録するかどうかは中間処分場の任意だが、元請け業者は登録処分場に土砂を搬出すれば、その先の土砂を追跡しなくて済む。

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