大河で再注目「家康の丸薬」 静岡の薬剤師が10年前に再現

 徳川家康が常備薬として服用していたとされる漢方薬を再現した静岡市葵区東草深町の「むつごろう薬局」の薬剤師の鈴木寛彦さん(56)が、大河ドラマ「どうする家康」をきっかけに再注目されている。家康の漢方薬に関する講演や展示の依頼が今夏、多数寄せられている。

漢方薬「八之字」を手にして「バランスの良い薬」と説明する鈴木寛彦さん=5月中旬、静岡市葵区の「むつごろう薬局」
漢方薬「八之字」を手にして「バランスの良い薬」と説明する鈴木寛彦さん=5月中旬、静岡市葵区の「むつごろう薬局」

 再現した漢方薬は「無比山薬円(むひさんやくえん)」。江戸時代の医学書「延寿和方彙函(えんじゅわほういかん)」によると、家康は平素から服用していた。たんすの8層目に保管していたため「八之字(はちのじ)」とも呼ばれる。家康が読んでいたと伝わる中国の北宋時代の処方集「太平恵民和剤局方(たいへいけいみんわざいきょくほう)」には、潰瘍を取り除いて胃腸の調子を整えるなどの効能があると記されている。
 県内外で薬局を営む鈴木さんは10年前にテレビ局に薬の再現を依頼され、歴史好きだったこともあり快諾した。同医学書に基づき「五味子(ごみし)」「赤石脂(しゃくせきし)」「茯苓(ぶくりょう)」など12種類の生薬をそれぞれ1時間ずつ薬研で研ぎ、水分を飛ばした蜂蜜と混ぜ、直径7ミリほどの丸薬にした。「手に豆を作りながら2週間ほどで必死に作った」と振り返る。
 再現した丸薬は店先に展示している。家康への関心が高まっている今年は、丸薬を見に大阪から歴史ファンが訪れたという。
 藤枝市郷土博物館・文学館では特別展「徳川家康と田中城」(6月3日~7月17日)の中で丸薬を展示する。徳川みらい学会が8月26日に静岡市歴史博物館で無料で実施する「静岡歴史塾」の「家康公 長寿秘伝の漢方薬と、薬からひもとく人物像」(予約不要)など、講演も続く。
 鈴木さんは「家康公が天下太平の世を築いたのは健康長寿であったからこそ。その一助となった漢方薬について多くの人に知ってほしい」と話している。

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