記者コラム「清流」 問われる倫理観

 「もう一歩壁に近づいてもらえますか?」「目線をこの辺にお願いします」。イベントや展示会などの取材で写真を撮影する際、対象者に立ち位置や動きなどをお願いすることがある。
 もちろん「やらせ」ではない。演出の一環の「絵づくり」だ。新聞に掲載される写真は構図が肝で、伝えたい内容を1枚に凝縮する。20年以上前の新人時代には、上司から「写真で何のニュースかが分かるように撮れ」と指導を受けた。
 ただ、この絵づくりは時と場所を選ぶ。浜松市北区で2日、台風2号の接近に伴う大雨で土砂崩れが起き、1人が死亡した。後日取材に訪れた他社のカメラマンは被害間もない災害現場で周囲に絵づくりを求めていた。マスコミの倫理観が問われる昨今。会社は違うが、同じ報道に携わるものとして恥ずかしく思う。
 (浜松総局・宮崎浩一)

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