ユース審判員の育成 サッカー文化醸成期待【記者コラム 黒潮】

 静岡県サッカー協会が取り組むユース世代の審判員育成が実を結んでいる。「強豪国にはいいレフェリーがいる」という格言がある。選手が安心してプレーできる環境を整えるとともに競技人口の裾野を広げ、王国復権につなげたい。
 5月の県高校総体西部地区大会でユースレフェリー久米柚嘉さん(浜松工高2年)が主審を務めた。女子高校生が高校男子の公式戦で主審を務めるのは県内初。中学生まで選手だった久米さんは同校サッカー部マネジャーを務めながら、月1回の研修会に参加して3級の審判資格を得た。
 選手だけではなく、審判を志す高校生にも世界に目を向けるきっかけを与えようと、3月下旬のU-17(17歳以下)県高体連選抜チームの韓国遠征に初めて高校生審判2人を帯同させた。2人とも落ち着いて役割をこなし、帰国後、うち1人は東海高校総体で副審を務めた。県協会審判委員会は各種の研修会開催に加え、U-12(12歳以下)県大会決勝にもユース審判員を派遣するなど経験の場を与え、人材を育てている。
 サッカーの審判員は1~4級に分かれ、担当する試合規模が異なる。さらに国同士の代表戦には国際資格が要る。ワールドカップ(W杯)アジア予選などで副審を務めた唐紙学志さん(44)=静岡市駿河区=は今季、Jリーグ1部(J1)で副審担当200試合を達成した。本県出身者で初、通算でも16人目の快挙。唐紙さんは県協会に勤め、研修会で高校生らを直接指導している。偉大な先輩の背中を追い、静岡から国内外で活躍する優秀なレフェリーが輩出されることを期待したい。
 審判の判定は正しくて当たり前で、レフェリーには日々研さんが求められる。重大な場面をビデオで確認するVARがあっても、細かなファウルの基準を示して試合の流れをコントロールする審判員の役割の重要性は変わらない。
 映像技術と情報社会の進展でミスジャッジに厳しい批判が集まる傾向が強まっているが、スポーツで最も大切なのは相手を尊重するフェアプレー精神。選手、指導者そして観客もユースレフェリーの成長を支える意識を持ち、王国静岡でサッカー文化がさらに醸成されることを願う。
 (運動部・寺田拓馬)

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