静岡人インタビュー「この人」 手延べ麺職人 加藤剛さん(浜松市北区)

 浜松市北区引佐町の製麺所「いなさの郷」社長。手延べのそうめんやうどん、きしめんなどを手がけ、特産品「遠州手延べ麺」として売り出している。閑散期には茶の栽培も行う。46歳。

加藤剛さん
加藤剛さん

 -どのような麺か。
 「地域の特産品として40年ほど前から製造が始まった。現在は私と父、数人のパート従業員で生産している。そうめん、きしめん、うどんの素材は同じだが、太さの規格が異なる。そうめんを手延べで作っているのは県内でうちだけ。抹茶味や地元産のタマネギ味の麺作りにも挑戦している」
 -手延べ麺の魅力は。
 「機械や包丁で麺を切る工程がなく、生地を熟成させながら時間をかけて仕上げている。100キロの麺に対して、コップ1杯分の水分量の違いで出来上がりが全く変わってしまう中、長年の肌感覚で天候にも左右される生地を調整している。手間が掛かる分、手延べならではの喉ごしや舌触りの良さ、コシの強さが出せるのが魅力」
 -どんな苦労があるか。
 「早朝4時からの作業や繊細な湿度管理も大変だが、現在は物価高に苦しんでいる。国際情勢などの影響で小麦粉を中心とした原材料や包材などのすべてが高騰している。素材にはこだわっているので、安価なものに変えれば味も全く違うものになってしまう。何とか品質を落とさずに伝統を守っていきたい」
 -今後の展望は。
 「今の客層は県内がメイン。ネット販売を拡大するなど、全国や海外の人に『遠州手延べ麺』を知ってもらう機会を増やし、まずは一度食べてもらいたい。良いものを作っていれば自然とリピーターは増えていくと信じている」
 

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