PTA活動変革の時 デジタル導入、組織縮小 静岡県内事例

 今後の在り方が社会的な関心事となっているPTA。共働き家庭の増加、少子化、新型コロナウイルス禍などを背景に、時代の流れに合わせた形にしようと、県内でも変革が加速している。保護者や教員の負担を減らし、無理のない範囲での活動を目指す事例を取材した。

静岡市清水区の小中一貫PTA「いりえPTA」設立を会員に伝える広報誌(同PTA提供)
静岡市清水区の小中一貫PTA「いりえPTA」設立を会員に伝える広報誌(同PTA提供)


 伊豆の国市立韮山小のPTAは、デジタル化や組織のスリム化に乗り出した。
 今年、保護者の参加を円滑にするため、専用アプリを導入した。アプリを開くとカレンダー上に「登下校時の見守り当番」「社会科見学付き添い支援」などの業務が表示される。保護者は日時や内容などの情報を確認し、応募する。
 アプリ導入に関して、保護者から賛同の声が相次ぐ。3年生の保護者の一人、中野良彦さん(38)は活動に参加しやすくなったと評価する。「これまでは妻がPTAに関する情報のやりとりをしていた。行事予定が紙で配られていたので、知る機会も少なかった。スマホのアプリなら、いつでも予定が分かる」と話す。
 中野さんと同じ3年生の子どもがいる日吉由里子さん(49)は「女性一人の活動参加に抵抗があり、ママ友に行くかどうか聞いていた。誰が参加するか分かるので、それまで面識がなかったお母さんとも話す機会が生まれる。交友関係の広がりが、PTA活動の参加の理由になっている」と利便性の高さを実感する。
 現在、同小児童の約500世帯の約7割がアプリに登録している。今春入学した1年生の保護者も増えているという。4月の見守り活動には保護者約60人が参加した。旗振り役を担った加藤龍・前会長(47)は導入の理由について「共働きの時代なので、できることをできるときに無理のない範囲でやってほしいという思いがあった」と説明する。
 教員にも好影響を与えている。日吉正幸教頭は「教員を補佐する保護者を確実に確保できるようになった」と話す。「学校活動で児童と保護者の接点が増えた。『親子の会話が多くなった』という声も聞く」と評価した。
 4月のPTA総会はオンラインで実施。活動時間中に子どもを預けられない保護者の参加も促した。
 活動のデジタル化と平行して、組織の効果的な縮小にも取り組んでいる。これまでは各地区から役員を49人選出していたが、本年度から0人にした。児童の少ない地区では早いサイクルで再任されること、地区役員のみに仕事が集中してしまうこと―といった課題の解決を図った。PTAの中枢は会長、副会長のほか、1学級2人のクラス役員のみとした。

 「在学中1役員」慣例見直し 静岡/小中一貫設立 袋井/委員会を廃止
 動きは他にも。静岡市清水区の市立清水入江小と市立清水八中のPTAは統合に踏み切った。昨年度、当時の小中のPTA会長が統合を発案。オンラインの書面臨時総会で小中双方の保護者から承認を得て、今春に小中一貫PTA「いりえPTA」を設立した。
 地域から求められる交通安全指導や補導の委員会は残すものの、統合による組織見直しで役員は半数以下に。「子ども1人につき在学中に1役員」という慣例は見直し、意欲のある保護者が自分の生活スタイルに合わせて活動できる体制に変えた。小中一貫教育が進み、学校間の連携強化が望まれている事情も後押しした。いりえPTAの広田潤会長(44)は「活動の進め方も事務手続きも全てが手探りだが、新たなPTAをつくりたい」と意気込む。
 袋井市立袋井南中PTAも今春、「前例踏襲になりやすいPTA活動に破壊的イノベーションを起こす」というスローガンを掲げ、主体性を重視した活動へと転換した。昨年まであった学年委員や自治会代表委員など六つの委員会は全て原則廃止。82人いた委員はPTA本部の6人のみとなった。
 昨年度までPTAの委員が休日に地域を車で回って行っていた資源回収は、三者面談の際に学校に一時的にコンテナを設置し、各家庭から段ボールや空き缶を持ち込む形式に変更した。
 転換に伴いボランティアを募る形で行った3月の愛校作業には、生徒や保護者、教職員の計約150人が集まったという。
 (大仁支局・小西龍也、教育文化部・鈴木美晴)

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