パートナー制度 静岡県内行政サービス拡充 続柄「縁故者」選択可

 3月までに静岡県などの自治体が導入したLGBTQなど性的少数者のカップルを公認する「パートナーシップ宣誓制度」。浜松市が6月、住民票の続柄を「同居人」以外に、利用者の希望に沿って親族に近い関係性を示す「縁故者」を選べるようにするなど、行政サービスが拡充している。一方、同様の対応を認めていない市町も多く、自治体によって差が生じている。

 「見た目と、戸籍上の性別とのギャップに困惑した市職員に、全ての事情を説明するほかなかった」。2020年に浜松市でパートナーシップ宣誓し、市内で暮らすトランスジェンダー(出生時に割り当てられた性と自認する性が一致しない)の20代男性は昨春、戸籍上同じ性別のパートナーと市内で転居した際の手続きで苦労した。一見すると、男女の夫婦に見える2人。住民票の続柄が「同居人」であることに戸惑った職員が関係性について、説明を求めてきたという。
 トランスジェンダー男性は普段は父親として生活し、周囲から「結婚したんだね」と認識されている一方、「(戸籍などの)紙面上では異なる。改めて隠している現実を突きつけられると傷ついてしまう」と漏らす。
 浜松市が新たに選べるようにした「縁故者」の続柄は、海外で同性結婚した外国人カップルなど親族に相当とみられる関係性に使われる。相続など法的な効力は発生しないものの、市として2人の関係性をこれまでの「同居人」より認める形になる。
 住民票の続柄に「縁故者」を選ぶことのできるのは3月に磐田、掛川、菊川、焼津、森などが導入し、3日時点で7市町。4月には県が、県職員互助会員の結婚祝い金を支給できる制度を整えるなど、自治体の裁量内だが、行政サービス面で法律婚に徐々に近づいている。住民票の続柄の選択肢が広がったことに男性は「2人の関係性がより近くに感じる」と導入を歓迎する。
 他方、自治体の対応には差がある。縁故者を続柄の選択肢にしていない市町の理由は「制度が整っていない」(静岡市)、「今のところ利用者から求める声がない」(富士市)などで、いずれも相談があれば対応するという。
 県は「市町にサービスの拡充と理解増進を合わせて呼びかけていきたい」(県男女共同参画課の松永俊乃課長)と話す。パートナーシップ制度に詳しい中京大の風間孝教授(社会学)は「サービス拡充の動きは、当事者に勇気を与える。自治体は当事者の声を聞き、婚姻しているカップルに提供している行政サービスを調べて、導入できそうなものを検討したりしてみては」と提案する。
 (浜松総局・金沢元気)

 パートナーシップ宣誓制度 静岡県内では浜松、富士、静岡、湖西市に続き、県が3月から導入した。宣誓者は140組を超える。公立病院の入院面会や公営住宅入居など、家族として扱う。浜松市では住民票に記載される世帯主との続柄の一つ「縁故者」は国が示す「住民基本台帳事務処理要領」記載の「事実上の親族関係が認められる場合」を根拠に扱えるようにした。県外では兵庫県明石市や東京都世田谷区などで使われている。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞