袴田さん弁護団、3者協議打ち切り要請 9月初公判申し立て【最後の砦 刑事司法と再審】

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審を巡り、弁護団は18日、静岡地裁、静岡地検との19日の3者協議を前に、9月に初公判を開くよう地裁に申し立てた。再審公判に向けた非公開の協議を3者で続けてきたが、「公正で迅速な裁判の妨げになっている」として打ち切りを要請。弁護団と地検の双方が主張立証方針を明らかにしていることも踏まえ、裁判の公開原則に従い、10月下旬までの協議期日を公判期日に改めるよう求めた。

記者会見で速やかに再審公判を開くべきだと訴える弁護団の角替清美弁護士=18日午後、静岡市葵区
記者会見で速やかに再審公判を開くべきだと訴える弁護団の角替清美弁護士=18日午後、静岡市葵区

 弁護団は申立書で、柔軟かつ率直に議論できる利点を考慮し、4月に始まった3者協議に協力してきたと説明。しかし、協議で検察官は形式的で官僚的な態度に終始しているとして「もはや協議を行うメリットは存在しない」と主張した。
 また、有罪立証を維持する方針の地検が法医学者7人による共同鑑定書などの証拠を取り調べ請求予定であることにも触れ、再審請求審の蒸し返しに当たるとして「却下するよう求めていく」との考えを示した。
 静岡市葵区で記者会見した弁護団の角替清美弁護士は、3者協議で問いかけても検察官は「言えません」の繰り返しだったと批判。「国民の目が入る公開の法廷で同じ態度を取れるだろうか」と疑問を投げかけ、「本件に限れば事前に協議する必要はない」とした。
 (社会部・佐藤章弘)
「貴重な人生愚弄」 有罪立証撤回要求 県弁護士会が声明  袴田巌さんの再審公判を巡り、県弁護士会の杉田直樹会長は18日、静岡地検に対し、有罪立証方針を撤回するよう強く求める声明を公表した。静岡市葵区で記者会見した杉田会長は「いたずらに貴重な時間を費やす行為。袴田さんに残された貴重な人生を愚弄(ぐろう)している」と述べた。
 声明は、袴田さんの再審開始を認めた2014年の静岡地裁決定に検察官が不服を申し立てたことから、再審開始の確定までに9年掛かった経緯を指摘。検察官が掲げる再審公判での争点を「(再審請求審で)既に過剰なまでの主張立証を行ってきたのであり、不当な蒸し返し」と非難した。
 その上で、袴田さんの再審公判は「袴田さんの雪冤(せつえん)のみならず、国民の司法に対する信頼がかかっている」と強調。静岡地裁に対しても速やかに再審公判を開き、判決を言い渡すよう要望している。
 声明は地検や地裁、法務省など関係機関に送付。神奈川県弁護士会も同様の会長談話を発表している。

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