頻発する出力制御 再エネ活用 蓄電不可欠【西部記者コラム 風紋】

 静岡県内でも電力を蓄える「蓄電所」ビジネスが始まる。サーラコーポレーションが7月、浜松市東区に蓄電所を整備して送電線とつなぐ「系統用蓄電池事業」に参入すると発表した。太陽光などの再生可能エネルギーが余った際に充電し、必要に応じて放電する県内初となる事業。今後、県内で同様の事業が相次ぐか、動向に注目したい。
 充放電の切り替えが比較的容易にできる蓄電所は、電力の需給調整としての役割が期待されている。電力は常に需要と供給を一致させる必要があり、電力会社は火力発電などで受給を調整しているものの、再エネの普及で調整しきれない事態が頻発しているからだ。実際、中部エリアでは供給量が過剰になるとして、太陽光と風力の発電の一部停止を求める「出力制御」が4月に初めて実施され、6月にかけ延べ十数回行われた。
 サーラグループの蓄電所は、約3千平方メートルの敷地に48台の日本ガイシ製コンテナ型ナトリウム硫黄電池(NAS電池)を設ける計画。出力は1万1400キロワット、容量は一般家庭約6千世帯分の1日の使用量に当たる6万9600キロワット時で、2026年春の稼働を目指している。電力の安い時間に充電し、不足時に販売することで差額を得るほか、需給の調整力そのものを取引する市場などを通じて収益を得る。これまでにも蓄電池は商業ビルなどに設置され、施設内の需給に応じて利用されてきたが、蓄電所は送配電網に直接つなぎ、電力システム全体の需給に対応する点で大きく異なる。
 普及の鍵を握るのは蓄電池の価格だ。サーラは総工費40億円のうち12億円を国の補助金で賄う。担当者は「補助金がなければ採算を取るのは難しい」と話す。だが、直近では海外製のより容量の大きい蓄電池が登場していて「今後、価格は大幅に下がり導入は進むと考えている」という。
 東日本大震災以降、太陽光発電量全国トップクラスになった浜松市をはじめ、県内各地に太陽光パネルや風力発電所が整備された。今後も発電量は増える。出力制御を避けて再エネを十分活用し、脱炭素化を進めるために蓄電所の拡大は欠かせない。
 (浜松総局・白本俊樹)

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