浜松・舘山寺温泉「ホテル九重」 建物解体終える 跡地利用は未定

 浜松市西区の舘山寺温泉を象徴する旅館として親しまれ、2021年10月に営業を終了した「ホテル九重」の建物部分の解体工事がおおむね終わった。所有する遠州鉄道(同市中区)によると、当初は今夏をめどに解体作業を進めていたが、完了は秋以降にずれ込む見通しという。新型コロナウイルスの行動制限が緩和され、観光客の客足が回復しつつある中、浜名湖畔の一等地に約1万7千平方メートルの広大な敷地があらわになり、「まだ何も決まっていない」(同社)という跡地利用策の行方を地元関係者たちが固唾(かたず)をのんで見守っている。

解体作業が行われているホテル九重。作業完了は秋以降にずれ込む見通し。跡地利用は未定=7月上旬、浜松市西区舘山寺町
解体作業が行われているホテル九重。作業完了は秋以降にずれ込む見通し。跡地利用は未定=7月上旬、浜松市西区舘山寺町
解体前のホテル九重=2021年10月、浜松市西区
解体前のホテル九重=2021年10月、浜松市西区
解体作業が行われているホテル九重。作業完了は秋以降にずれ込む見通し。跡地利用は未定=7月上旬、浜松市西区舘山寺町
解体前のホテル九重=2021年10月、浜松市西区

 ホテル九重は1987年に開業した。10階建てで総工費は約100億円。コロナ禍で2020年4月から休業し、団体旅行から個人旅行へシフトした顧客ニーズの変化や、施設の老朽化を理由に営業終了を決めた。休業期間中に火災報知機が誤作動で複数回鳴り響いて住民らが不安に感じたたことも、営業終了の決断を急ぐ理由になった。
 解体現場周辺には基礎部分の作業を進める重機の振動や作業音が響き渡る。浜名湖に突き出ていた長さ約45メートルの桟橋「浮見堂」も撤去され、近くの飲食店で働く70代の女性は「住民や観光客の散歩コースになっていただけに残念。客からホテル跡に何ができるか聞かれるが、情報はなく答えられない。早く結論が出れば」と望む。解体現場正面に立つ大草山に家族旅行で訪れ、跡地を眺めていた同社株主の男性(83)=同市天竜区=は「ホテル九重は時代に合わなくなったのだろう。跡地が再び舘山寺を盛り上げる場所になってくれれば」と期待した。
 同社によると、工事は解体物の受け入れ側の都合で今夏完了予定から遅れているという。同社幹部は半年程度遅れる可能性もあるといい、跡地利用について「地元が潤うような場として活用できなければ、遠鉄グループとして地域に受け入れてもらえないと考えている」と強調した。
 (浜松総局・白本俊樹)

 舘山寺温泉 1958年に温泉が掘削された浜名湖畔の風光明媚(めいび)な観光地。一帯にはホテルや旅館が十数軒立ち並び、海水浴やマリンレジャーなどを楽しめる。近くに浜松市動物園や、はままつフラワーパークがある。年間40万人前後あった宿泊客は新型コロナ禍で半数以下に激減したが、2023年度は7割程度まで回復してきた。ホテル九重の解体を進める遠州鉄道グループは一帯で、ホテルウェルシーズン浜名湖、遊園地「浜名湖パルパル」などの運営を手がけている。

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