世界の船員 山駆け巡る 沼津・伊豆でトレイルラン企画

 新型コロナ禍で入港や下船の拒否、船員のコロナ感染など厳しい状況に見舞われた世界中の船員を勇気づけようと、英国を拠点にする世界規模の支援団体が静岡県を舞台に取り組みを始動した。第1弾として開催したのは沼津、伊豆両市を舞台にした「トレイルラン」。コロナ禍で疲弊した仲間同士が富士山と伊豆半島の雄大な自然を満喫し、心を新たにした。

ゴールを喜ぶ出場者=沼津市
ゴールを喜ぶ出場者=沼津市

 団体は世界各国で船員を支援する「ミッション・トゥー・シーフェアラーズ(MTS)」。5月下旬の開催当日は19カ国から20~60代の約190人の船員、海運従事者らが参加した。参加者らは3人一組のチームを作り、2日間にわたり山中を駆け巡る「トレイルラン」を楽しんだ。海上輸送を支える船員を後押ししようと、チャリティーレースとして実施。貿易業など国内外の企業から1億円を超える寄付が寄せられた。
 「イベントを通じてとにかくリフレッシュしてほしかった」と実行委員のジャン・ウェバーさん。「日本は海事産業の中心国。海もあり富士山もあり、東京からアクセスも良い」。豊富な自然を擁する本県開催が船員の癒やしにつながると期待したという。
 都内の海運会社に勤務し船の機関長の経験もあるという山根啓さんは長期間の船生活がストレスになっていると強調。「船の生活では接する人が限られる。大会を通して、世界の同業種の人と関われるのがうれしいし、楽しい」と笑顔を見せた。
 団体によると、国際貿易の約9割は海上輸送で行われ、世界で約170万人が海運業に従事している。船員は長いと3カ月以上の長期間に渡り、海上で生活する。過酷な労働に加え、コロナ禍では感染した船員がいないにもかかわらず入港を拒否されたり、病気になっても下船できなかったりするケースもあったという。
 (東部総局・天羽桜子)

 ミッション・トゥー・シーフェアラーズ(MTS) 過酷な労働環境で働く海運従事者を支援しようと1856年に設立。世界50カ国200カ所以上の港湾に拠点を置き、日本では東京、神奈川、兵庫に拠点がある。

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