ゲームで学ぶ 核廃棄物処分の合意形成 静岡大の人気講義 架空の島の住民になりきり議論

 静岡大の学際科目「静岡県の防災・減災と原子力」の一環で、高レベル放射性廃棄物の地層処分施設建設を巡る合意形成についてゲームで学ぶ講義が開かれている。10年以上続く人気講義となり、3年前から琉球大(沖縄県)との連携も始まった。担当する大矢恭久・学術院理学領域准教授は「ゲーム形式にすることで学生が活発に意見交換をしてくれる」と意義を話す。
地層処分場の受け入れについてゲームの画面を見ながら活発に意見交換する学生=7月下旬、静岡市駿河区の静岡大
 「経済効果を求めるなら処分場建設より環境保護が優先では」「ここは原発が近いのでコストが抑えられそう」-。7月下旬、静岡市駿河区の静岡大静岡キャンパス。地層処分場の受け入れ問題について、渦中の住民になりきって議論する学生の声が教室に響いた。
 学生約50人が2グループに分かれてそれぞれ違うゲームを体験した。ゲームは仮想の島「コロル」を舞台に受け入れ議論を疑似体験できるタブレット端末用のアプリと、建設の決定権を誰が持つべきかを▽有力候補地の住民▽専門家▽一般国民▽政府-の四つの立場を演じることで考える「誰がなぜゲーム」の2種類。
「コロル島」の住民を演じるゲームの1場面
 アプリはスイスで開発され、大矢准教授が日本語版に改良した「New HLW!」。学生は島の4地域の住民となり、地域特性や地質の情報を参考にしながら安全性や経済性などのパラメータを設定。データに基づいて、どの地域に処分場を建設するのが最も合理的かについて討論した。
 農学部の杉山玄大さん(3年)は「一方的な講義ではなく、自分で考えて自分の意見を導くことができた」とし、「自分と同じ意見より反対意見のほうが参考になることが多かった」と“発見”を振り返った。人文社会科学部の荻原諒地さん(3年)は「地層処分場は危険なイメージがあったが、雇用や経済効果に期待して受け入れたいという意見もあることに気付けた」と感想を話した。
 アプリは琉球大も注目している。同大の学生が中高生でも親しめるように改良した。大矢准教授と改良を指導し、同日の「誰がなぜゲーム」を担当した琉球大教育学部の濱田栄作教授は「アプリを中学の先生に試してもらって改良した。大学以外の短い授業時間でも使えるようになった」と活用の広がりに期待する。実際に沖縄県の中学で授業に導入する模索が進んでいるという。
 大矢准教授は「ちゃんと根拠を持って相手に説明する大切さを知ってほしい。考え方は地層処分場問題以外にも役立つ。ゲームがその一助になれば」と願う。
 (社会部・鈴木誠之)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞