沼津の旅館が休館日導入 従業員も満足 収益はプラス 観光庁の事例集に掲載

 沼津市戸田の旅館「AWA NISHI―IZU(アワ西伊豆)」が、生産性向上を目的に原則週1日の休館日を設け、従業員の満足度向上につなげた。先進的な取り組みとみられ、観光庁の「宿泊業における休日数増加の事例集」に取り上げられた。

一部業務を休館日にまとめ、営業日の労働時間を短縮している=沼津市戸田のアワ西伊豆
一部業務を休館日にまとめ、営業日の労働時間を短縮している=沼津市戸田のアワ西伊豆

 施設は2022年3月にオープンした。客室は22室。パートを含む従業員13人で1日最大50人以上の客を迎える。同年6月ごろから繁忙期を除き休館日を設定している。
 従業員の声がきっかけ。開業直後という事情もあり「休みを早く決めてほしい」などの要望が上がった。観光地という立地ゆえに曜日や時期によって稼働率の変動が大きく、稼働率や営業費用などを基に収支をシミュレーションした結果、休館日を設けても収益はプラスになると判明した。
 施設点検や予約確認といった業務を休館日にまとめ、営業日は宿泊客対応などに専念する。その結果、勤務時間に長い休憩を挟む「中抜けシフト」や残業時間が減った。従業員の休日数自体は変わらないが、会社への愛着や共感を数値化したエンゲージメント指数は宿泊業の平均値より優れ、航空会社並みになった。開業以後、従業員の離職はゼロという。
 デジタル技術を活用した省人化も進めている。運営会社の竹屋旅館(静岡市清水区)の望月基弘常務(47)は「宿泊客を喜ばせるには、従業員が幸せを感じ楽しく働ける環境が欠かせない」と話す。
 (東部総局・矢嶋宏行)

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