静岡人インタビュー「この人」 「昭和すぎる」喫茶店の店主 藤原美恵子さん(沼津市)

 父親が開業した沼津新仲見世商店街の喫茶店「ケルン」(沼津市大手町)を1人で切り盛りする。半世紀以上趣が変わらない店は過ぎた時代を懐かしむ中高年に加え、古さに新鮮さを感じる若者を引き付ける。85歳。

藤原美恵子さん
藤原美恵子さん

 -これまでの歩みは。
 「高校を卒業して洋裁学校に1年間通った後、父の手伝いを始めてからずっと働いている。当時は日付が変わる時間まで営業し、3交代勤務だった。1990年に父が他界し、夫と共に店の2階に移り住んだ。5年ほど前から1人で営業している」
 -こだわりは。
 「冷凍食品は一切使わず全て手作り。見た目はシンプルで家庭的な味にしている。愛を込めているからおいしい。お客さんから値上げしろと言われ、数年前に全メニュー50円値上げした。おかず4品のサービスランチは750円、クリームソーダは450円。1日2度来る常連さんや年金暮らしのお客さんを考えるともう値上げできない」
 -評判の受け止めは。
 「昭和の人間なのでうれしい。ぼろぼろだから直そうとしたこともあるが、雰囲気を変えないでと言われてそのままにした。10歳若かったら直したかもしれない。今は私もこの雰囲気が好き。コロナ禍前は若者がたくさん来て驚いた。人形を持ったラブライブ!ファンも訪れる」
 ―今後は。
 「いつまで続けられるか分からないが、これからも形を変えずに営業したい。お客さんはいい人ばかり。会話して元気になり長生きできている。特に常連さんは家族みたいなもの。水やおしぼりを配り、食器を片付け、買い物に付いてきてくれる人もいる。お客さんが好きなことをして、ゆっくりくつろげる店であり続けたい」
 (東部総局・矢嶋宏行)

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