“伝家の宝刀”に慎重論 調査特別委 意見紛糾 市民「真相解明を」 御前崎市議会 百条委設置議案否決

 御前崎市の新こども園設立計画を巡り市議7人が予算議決後に執行部に計画変更を求めた問題で、8日の市議会9月定例会本会議では、原因追及する調査特別委員会をより強い調査権限を持つ「百条委員会」に移行する議案が提出されたが、否決となった。虚偽陳述するなどした証人を偽証罪で刑事告訴できる百条委は強い権限を有することから“伝家の宝刀”と呼ばれ、当初から調査特別委の内部では「これ以上、市議会を混乱させてはいけない」と慎重論があった。委員全員の賛同が得られず議案可決は難しい情勢だったが、他の委員らは「中途半端な姿勢では市民は納得しない」と議案提出に踏み切った。

調査特別委員会を百条委員会に移行する議案を採決する御前崎市議会。議案は賛成少数で否決した=市役所
調査特別委員会を百条委員会に移行する議案を採決する御前崎市議会。議案は賛成少数で否決した=市役所


 「調査は徹底的にやるべきだ」。6日午前、市議会全員協議会室。欠席者1人を除く調査特別委のメンバー7人が2日後に控えた本会議に向け、百条委の設置議案を提出するかどうか最終会合を行った。メンバーの一人、鈴木克己氏は計画変更を要望した7人を念頭に「自分たちで議決した予算計画をたった2カ月で見直せと言うのは明らかにおかしい。疑念は晴らすべき」と百条委に賛同を求めた。
 ただ、慎重な立場を見せていた議長も務める増田雅伸氏らは「計画変更を要望した議員たちは反省している。一連の行動でこども園の計画自体が変わった訳ではない」となだめた。関係者によると、柳沢重夫市長も調査特別委が立ち上がった6月以降、市議会が内紛状態になっていることに対し、「御前崎市の恥さらしだ」と苦言を呈していた。
 そして、迎えた8日の市議会本会議。百条委の設置議案は計画変更を求めた市議らも採決に加わり、否決された。この結果を受け、市内の70代女性は「御前崎市は原発が誘致されて以降、政治と利権が密接な関係になったと今でも感じることがある。今後一切、政治に疑念が生じないように今回の問題を市全体で真相解明してほしい」と注文を付けた。
 本会議終了後、ある市議は調査特別委を継続させる方針を示し、「今後は計画見直し要求の面会を受け入れた市長も調査対象になる」と語った。
 (御前崎支局・市川幹人)

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