着物店にカラフル綿あめ 沼津の「マルト白壁本店」 創業102年目、姉妹の挑戦

 沼津駅南口、沼津仲見世商店街の老舗着物店「マルト白壁本店」の一角に綿あめ専門店がオープンした。着物店の入りにくいイメージを払拭し、誰もが気軽に立ち寄れる場所を目指す。「人が集まって商店街が盛り上がり、着物の魅力を広めるきっかけもできれば」。のれんを守る姉妹の、創業102年目の挑戦が始まった。

色とりどりの綿あめが並ぶイロドロボウ=沼津市大手町
色とりどりの綿あめが並ぶイロドロボウ=沼津市大手町

 着物店の半分弱を改装した店舗「絹綿飴(あめ)イロドロボウ」には、赤い「完熟苺(イチゴ)」や薄い青の「駿河湾沼津深海塩」など色とりどりの綿あめが並ぶ。休憩スペースを設け、ラムネなどの飲み物も提供する。社長の白壁正子さん(63)と妹の富田美幸さん(60)が客を出迎える。
 コロナ禍がきっかけの一つ。長年の課題だった着物離れや商店街の客足減少が一段と進んだ。100周年を区切りに閉業も視野に入れたが、親族に「せっかく先代が残した店があるから最後にやりたいことを」と背中を押された。白壁さんは箱ごと購入するほど、富田さんは家庭用製造器を購入するほどの綿あめ好き。着物の原料の絹糸とイメージが合うことも決め手となり商材に選んだ。店舗があるビルの3階で製造する。
 味はもちろん、色に強くこだわる。同じ色でも濃淡や模様によって印象が異なり、客の顔や雰囲気に最も似合う色を選ぶのが着物店の大切な仕事だからだ。パウダーの量を細かく調節するなど試行錯誤を重ね、素材に近い色合いにした。ウサギが着物店から色を盗み綿あめを作った-との設定で「イロドロボウ」を店名に。富田さんは「色を選ぶ楽しさを感じてほしい」と願う。
 着物店では縁遠かった高校生や若いカップル、観光客が詰めかける。店内でつながる着物店に足を延ばし、着物や小物に関心を寄せる人もいる。白壁さんは「見るだけでも、着物の良さを知ってもらえるだけでも構わない」と歓迎する。
 (東部総局・矢嶋宏行)

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