御前崎市議会 見直し要求 検証して改革につなげ【西部 記者コラム 風紋】

 御前崎市のこども園新設事業を巡り、市議会(定数15)の正副議長ら7人が関係予算を可決後、市に水面下で計画見直しを要求した問題が波紋を広げた。議員は議案審議を尽くし、いったん予算案や条例案を可決すれば議決責任が生じる。やむを得ず変更する場合は、公の場で住民に分かる形で議論し、補正予算などで修正するのが正しい手続き。7人の行動は不適切だ。反省点を市議会の教訓としたい。
 同事業は幼保こども園3園を再編し、民設民営のこども園を新設する。市議会は3月に了承し、関係予算700万円を採決に加わらない議長を除く市議全員の賛成で認めた。ところが、7人は5月末に市長に「住民の不安の声がある」として計画延期を求めた。
 ここでの問題点は一部の議員だけで動いたことだ。7人は勉強会を開くなど行動をともにするメンバー。市議会の総意で決めた議決を仲間内で見直し要望すれば、周囲が疑念を抱くのは当然だ。
 その後、市議会が設置した調査特別委員会では、3月に予算議決した際に「公設だと勘違いしていた」と事業内容を理解していなかったと話す市議もいた。肝心の「住民の不安の声」についても詳細な説明を避けた。さらに、市内の会社が新こども園事業への参入を目指していたことも判明。事業の応募条件である社会福祉法人の設立に向け、見直し要求に加わった市議が法人役員に就くことを快諾していたことも明るみに出た。議案の最終決定者である議員として職責の重さを自覚すべきだ。
 浮き彫りになった問題点は議会改革につなげるべきだ。議決後に住民から不満が出ないように、議案審議の際に住民や専門家が直接、政策案に対して意見を主張できる場を設けてはどうか。同市議会は定例会を年4回開催しているが、審議を充実するため会期を延長したり、通年議会を採用していつでも議会を開けるようにしたりすればいい。他市町の好事例になり得る。
 御前崎市議会は今後、同市に立地する中部電力浜岡原発の再稼働の是非といった重要課題と向き合う。より一層、責任と倫理観が問われる。市町議会は地方自治の砦(とりで)。有権者も選挙での一票が大事になる。
 (御前崎支局・市川幹人)

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