浜松を空から守る 市消防局・浜崎さん 消防庁・防衛省の養成事業「全国第1号」ヘリ操縦士

 浜松市消防局職員の浜崎翔太さん(36)が、消防防災ヘリコプターの操縦士不足解消を目的に総務省消防庁と防衛省が実施している連携養成事業を活用し、操縦士の国家資格を取得した。同事業による国家資格取得は全国第1号。浜崎さんは今後、市消防ヘリ「はまかぜ」に搭乗するための型式限定資格を取得した後、全国2番目の面積を有する浜松市の消防・救助活動を、副操縦士として空から支える。

消防庁と防衛省の連携事業を活用して事業用操縦士の資格を取得した浜崎翔太さん(左)と染葉秀一消防航空隊長=9月中旬、浜松市浜北区の市消防局消防航空隊
消防庁と防衛省の連携事業を活用して事業用操縦士の資格を取得した浜崎翔太さん(左)と染葉秀一消防航空隊長=9月中旬、浜松市浜北区の市消防局消防航空隊


 消防庁は全国で自治体が運航する消防防災ヘリの墜落事故が相次いだことを受けて2018年頃、機長と副操縦士の2人を搭乗させる「ダブルパイロット制」の導入に着手し、22年4月に義務化した。ただ、深刻な操縦士不足に加え、年齢層の偏りから予想されるベテラン操縦士の大量退職、養成にかかる多額の費用など課題が多く、民間養成機関の半額程度の費用で済む自衛隊施設を活用し、若手操縦士を養成する同事業に乗り出した。
 操縦士不在によって18年10月~20年4月の約1年半、消防ヘリを運休した浜松市は同事業にいち早く手を上げ、消防局内で候補者の募集を開始。救助隊を長く経験してきた浜崎さんが「消防ヘリ操縦士として市民の救助活動に携わることは魅力的」と応募した。
 浜崎さんは22年1月、陸上自衛隊航空学校宇都宮校(宇都宮市)に入校。自衛隊員とともに座学や操縦訓練に臨み、同年9月に学科審査を通過すると、23年7月には技能審査にも合格し、8月に同校を卒業して市消防局に復帰した。
 市消防局には現在、浜崎さんを含めて6人の操縦士が所属する。消防航空隊の染葉秀一隊長は「全国2番目の面積で海に面し、中山間地が市域の半分を占める浜松に消防ヘリは不可欠。今後も操縦士を確保し、運航を継続させていきたい」と強調し、同事業の次回募集にも手を上げて操縦士の養成を進める意向を示す。
 50代、60代のベテラン操縦士に囲まれながら日々、研さんを重ねる浜崎さん。「人命救助に役立てるよう一歩ずつ経験を積み重ねていきたい。市民の力になりたい」と笑顔を見せた。
 (浜松総局・宮崎浩一)

 <メモ>浜松市消防ヘリ「はまかぜ」の2022年の運航状況は、火災や救急などに対応する緊急出動が前年比15件増の131件あり、70人を救助・搬送した。活動内容は救急が71件(救助・搬送67人)と最も多く、救助が26件(3人)、火災が24件(0人)、その他が10件(同)と続いた。地域別では中山間地が広がる天竜区が過半数の75件(63人)。そのうち、市街地の医療機関への救急搬送が67件(63人)を占めた。そのほかの地域別は北区11件(1人)、南区10件(0人)、西区8件(2人)など。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞