琉球海溝付近に観測点 地震予測精度向上へ 東海大と静岡大が設置

 マグニチュード(M)8クラスの巨大地震が起き得るとされる九州以西の南西諸島で、海底の地殻変動を調査する東海大海洋学部(静岡市清水区)と静岡大(同市駿河区)の研究グループが新たに、沖縄県宮古島沖の海底に観測点を設けた。周辺の海域はこれまで観測網の整備が不十分で、巨大地震の引き金となるプレート(岩板)同士の固着域の状態などが分かっていない。駿河湾沖でも同様の調査を続けている同グループが、新たな観測手法で地震のメカニズムにつながるデータを集め、発生確率などの評価や予測精度の向上に役立てる。

琉球海溝付近に設置された海底観測機器=6月下旬、沖縄県宮古島沖
琉球海溝付近に設置された海底観測機器=6月下旬、沖縄県宮古島沖
研究グループが開発中の魚型ブイに観測機器を取りつけるメンバー=8月下旬、静岡市清水区の駿河湾
研究グループが開発中の魚型ブイに観測機器を取りつけるメンバー=8月下旬、静岡市清水区の駿河湾
琉球海溝付近に設置された海底観測機器=6月下旬、沖縄県宮古島沖
研究グループが開発中の魚型ブイに観測機器を取りつけるメンバー=8月下旬、静岡市清水区の駿河湾

新手法で地殻変動調査

 南西諸島に巨大地震をもたらす可能性のある琉球海溝は駿河湾沖の南海トラフと同様、フィリピン海プレートが陸のプレートの下に沈み込んでいる。
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 同海溝付近の調査は琉球大などが2000年代から、海底観測点を設けて実施。沖縄本島南部でプレートの固着が確認されたのに対し、石垣島南西部には存在しないことが分かっている。研究グループは今回、確認できていない約300キロの範囲を埋めるべく、宮古島の南東約80キロに観測点を設けて定期的にプレートの動きをモニタリングする。
 海底の地殻変動調査は通常、観測機器を船に取り付けて十数時間~数日ほどの時間を要するなど大がかりとなる。一方、研究グループは観測機器を載せる縦横1・5メートル、幅30センチの魚型ブイをつくり、船でえい航する手法を開発。「従来の半分の時間で同じ程度の観測精度」を目指し、今年からは駿河湾での調査も毎月行っている。東海大の原田靖専任講師は「高価な観測船でなくても簡単に計測できるようになる」と説明し、琉球海溝での活用に意欲を見せる。
 琉球王国の歴史書によると、1771年に最大30メートル以上の遡上(そじょう)があった「明和の大津波」により、宮古島では2千人以上が亡くなったと記録されている。島には陸に打ち上げられた痕跡「津波石」が多く点在するなど、繰り返し被害があったことが想定され、22年には政府の地震調査委員会も巨大地震についての長期評価を公表した。
 静岡大の生田領野准教授(地震学)は「過去2千年で4回起こったとされる琉球海溝最南部の巨大津波の発生源が分かるかもしれない」と期待する。
 (デジタル編集部・金沢元気)
 海溝型地震 海溝から沈み込む海のプレートによって引きずり込まれた陸のプレートが跳ね上がって起こる地震。プレート境界にたまったひずみが限界に達して固着域が急激にずれて発生するため、地震の発生規模は固着の分布から推定される。静岡大と東海大の研究グループは影響の大きい海溝近くの動きを捉えるため、海溝付近に観測点を設置し、海水を伝わる音波と陸上の地殻変動観測で使う衛星利用測位システム(GPSなど)を組み合わせたシステムで監視している。

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