「頭がさえてきた!」高齢者もeスポーツ 静岡県内自治体や介護施設、交流促進へ導入進む

 コンピューターゲームなどの腕を競う「eスポーツ」。国際オリンピック委員会(IOC)が五輪で採用を見据えるなど競技熱が高まる中、高齢者向けのeスポーツを推進する自治体や介護施設が徐々に増えている。運動のマンネリ化回避や、交流促進により高齢者の孤立を防ぐ狙いがある。

パズルゲームを体験する参加者。真剣な表情で画面を見つめ機械を指で動かしている=9月下旬、磐田市の富岡交流センター
パズルゲームを体験する参加者。真剣な表情で画面を見つめ機械を指で動かしている=9月下旬、磐田市の富岡交流センター

 磐田市は8月、eスポーツ企画・運営のディブルビジア(浜松市中区)と連携協定を締結した。eスポーツを地域活性化のコミュニケーションツールとして、世代間や企業間の交流を促すのが目的だ。
 9月に開いた高齢者向けの体験会。磐田市の富岡交流センターには地元の高齢者8人が集まり、曲のリズムに合わせて太鼓を打つ「太鼓の達人」とパズルゲームを体験。対戦する2人だけでなく、順番を待つ人も手や膝をたたいて盛り上げた。得点を重ねてクリアすると歓声が上がった。これらのゲームを初めて体験した藤田鉄士さん(75)は「体より頭を使うので、ぼけ防止にいいのでは。いろんな人と会話できるのが楽しい」と話し、「頭がさえてきた! よしやるぞ」ともう一度挑戦していた。
 島田市は本年度、高齢者を対象にしたeスポーツ教室事業を開始した。運営を県eスポーツ連合に委託し、月に1度の体験会▽地域での出前講座▽機器の操作や初心者への支援方法を学ぶサポーター養成講座―を実施している。来年度には市施設「プラザおおるり」にeスポーツを楽しめる専用部屋を設置する計画だ。
 半日型デイケアの運動にeスポーツを取り入れた施設もある。医療法人友愛会が運営する通所リハビリテーション「デイケアさとやま」(沼津市東原)は7月に日常のプログラムに導入。運動をする部屋の一角に運転シミュレーションゲームなどの機材を置いた専用コーナーを設けた。約3時間のデイケアのうち、50分ほどをeスポーツの時間とし、利用者が交代で使う。
 友愛会は数年前から市内のeスポーツイベントに参加したり、職員が日本アクティビティ協会(横浜市)が展開する健康ゲーム指導士養成講座を受けたりするなど、導入に向けて準備してきた。経営戦略室の柳田礼央さん(31)によると、eスポーツを通じて職員と利用者のコミュニケーションが円滑になったという。最初は「恥ずかしい」とためらっていた利用者もいざ体験すると楽しくなり、次第に意欲的になった。自宅でひ孫とゲームで遊んだ人もいた。
 9月には県外の施設と太鼓の達人のオンライン対戦をした。あらかじめ課題曲を決め、利用者は対戦に向けて練習を重ねた。柳田さんは「目標を作ることで利用者のモチベーションを維持できる。今後は利用者それぞれのゲームスコアの推移が分かるようにしたい。将来的にはシニアeスポーツ大会を開くことができれば」と展望を語った。
 (生活報道部・伊藤さくら)

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