記者コラム「清流」 空虚な模範解答

 まちづくりをテーマに中高生が大人と意見を交わす場に何度か立ち会った。「素晴らしい活動だと感動した」「私も地元に恩返しがしたい」-。生徒側から模範解答が連発。大人たちの感心した様子で幕は下ろされたが、記者の胸の内には違和感が残った。
 勉強、部活、遊びで手いっぱいであろう10代には難しい議題だったはずだ。取材メモを見返すと、抽象的な発言の羅列で、実のある議論の形跡は見当たらなかった。後日、出席した生徒の1人に、自分に求められていそうなコメントをしただけだと事もなげに言われ、違和感の正体に気づいた。
 大人が言う“良い子”とは、けんかをしない素直な子を指す場合が多い。これは“(大人にとって都合の)良い子”を求めていないだろうか。子どもは敏感に察知している。
(富士宮支局・国本啓志郎)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞