記者コラム「清流」 素朴な日常こそ

 静岡市駿河区の大谷街道沿いで30年以上、静大生や地域住民のおなかを満たしてきた「定食屋まるやま」。2022年6月に火災に見舞われ休業したが、今年8月に営業を再開した。
 再開後は、物価高や再建費がかさんだことなどから値上げを余儀なくされた。今までのレシピも焼失し、探り探りの調理だという。
 火災は今までの日常や価値観を大きく揺るがす。しかし、その中で変わらないこともある。「お客さんが喜んでくれることがうれしい。もうけたい欲はあまりない」と話す店主の佐藤栄男さん(69)の考え方は、創業時から火災を経た今も変わらない。欲は出さず、日々黙々と厨房(ちゅうぼう)で料理を作り続ける。
 一人一人の素朴な日々の営みこそが社会をつくる。そこに価値やドラマを見いだす記者になりたい。
(社会部・五十嵐美央)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞