温泉旅館「油山苑」一部再開 常連客ら喜びの声 台風15号で被災

 昨年9月の台風15号で厨房(ちゅうぼう)やロビーが濁流で床上浸水して休業を続けていた静岡市葵区の油山温泉の旅館「油山苑」が4日、約1年1カ月ぶりに一部営業を再開した。予約客限定で昼と夜にコース料理を提供する。初日から常連客らが訪れ、経営者一家とともに再開を喜んだ。

対面式となった食堂で、常連客に料理の説明をする大塚取締役(左)=静岡市葵区の油山苑
対面式となった食堂で、常連客に料理の説明をする大塚取締役(左)=静岡市葵区の油山苑

 台風15号で土石流が発生した油山川上流部で今月から、県が砂防ダム整備を開始。来年度の出水期までに完成の予定となり、安全確保の見通しが立ったことで同旅館も改修を進め、一部再開にこぎ着けた。再建資金を募ったクラウドファンディングで393人から計565万円が寄せられるなど激励にも後押しされた。
 以前は厨房と離れた広間が食事場所だったが、改修を機に厨房と対面式の食堂を新設。4日は常連客ら数組が訪れ、県産食材をふんだんに使った自然薯(じねんじょ)のおひたし、ローストビーフ、刺し身、エビイモなどの炊き合わせといったコースでもてなした。
 約30年前からほぼ毎年友人と宿泊していたアルバイト望月郁子さん(71)=同区=は「被災状況が心配で自分で一度見に来たほど。自然と料理と笑顔が魅力の旅館が再開してくれてほっとした」と喜んだ。同旅館の大塚祐史取締役(62)は「『おいしい』という声を聞いて再開してよかったと実感した」と語った。
 同旅館は来年1月上旬から宿泊も再開する予定。
 (社会部・瀬畠義孝)

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