英語「聞く」「話す」向上 湖西岡崎中、実践と振り返り 反復で上達

 静岡県内中学生の英語の課題として全国学力テストの結果から浮かんだ「聞く」と「話す」能力の向上。中学の学習指導要領「外国語」には「授業は英語で行うことを基本とする」と記されているが、現場ではどんな授業が行われているのか。能力向上の工夫とは。英語の授業に力を入れる湖西市立岡崎中を取材した。

中村圭太教諭(右)のアドバイスを受け、英語でやりとりに挑戦する生徒=10月上旬、湖西市立岡崎中
中村圭太教諭(右)のアドバイスを受け、英語でやりとりに挑戦する生徒=10月上旬、湖西市立岡崎中

 「Let’s talk in English.You can make mistakes.(英語で話そう。間違っても大丈夫)」。10月上旬、中村圭太教諭(40)の呼びかけで始まった3年生の授業。地震発生時に避難所でALT(外国語指導助手)が安心して生活できるように情報を伝える―という想定で、生徒は2人一組をつくり、ALT役と生徒役に分かれて英会話に取り組んだ。
 ALT役は、空腹や寒さといった困りごとを表現。生徒役は、もうすぐ食べ物が配給され、ブランケットも借りられることなどを説明した。「『もうすぐ』って英語でどう言うの」「相手に安心してもらうために、まずは不安を聞こう」。生徒は悩みながら会話を進めた。
 約10分後、学級全体でやりとりを振り返る「中間発表」を行い、悩んだ言い回しやうまく伝わったフレーズを発表し合った。中村教諭は授業の多くを英語で進めていたが、英会話に詰まった生徒に対しては日本語で、級友の表現をまねたり、より簡単な他の言い方を考えたりするようアドバイスした。
 50分間の授業中、英会話と中間発表を3セット実施。初めは言葉に詰まっていた生徒も反復すると、会話が進むようになった。生徒は各自、学びの成果をノートパソコンに英文で記録して授業を終えた。
 同校は県教育委員会の「児童生徒の発信力強化のための英語指導力向上事業」の研修協力校。会議や研修を通じ、昨年度から英語授業の課題分析と改善に取り組んできた。相手に話しかけたり聞いたりするやりとりを授業の軸に据え、生徒が英語を使う必要性を感じられるような場面や相手を設定。自らの成長や課題を振り返るために、英語のスピーチや文章の端末への記録も続けている。
 全校生徒約380人を対象に英語の授業を楽しいと思うか尋ねた今年のアンケートでは「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」が合わせて86・9%となり、前年に比べて約7ポイント上昇した。
 同校英語科主任の高柳美宏教諭(47)は「自分の意図を相手に分かりやすいように発信する力を高めることは、生徒の主体性の育成にもつながっている」と手応えを語る。
 (教育文化部・鈴木美晴)

 「発信力」強化へ研修やサイト 静岡県教委
 静岡県教委は本年度の中学校の英語教育改善プランで、生徒が自分の思いや考えを伝える「発信力」の強化を目標に設定。重点施策に教員の指導力向上を掲げ、研修を実施するほか、ことしからは授業改善コンテンツ閲覧や専門家への相談がワンストップでできる情報共有サイトの中学校教員への公開を始めた。
 県総合教育センターによる授業力向上のための教科別研修の中でも「聞く」「話す」の力を授業で養う方法に触れている。聞き取りが難しい時はICTを活用して音声の速度を変えたり繰り返し聞いたりする、生徒が言いたいことを即興で表現できる範囲を徐々に広げるために伝え合う活動を継続的に行う―など、具体案を紹介している。

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