袴田さん再審第2回、弁護団が反証「外部の複数犯」 「凶器」展示、取り調べ録音再生も

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定後、裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審第2回公判が10日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。犯人はみそ工場関係者であり、犯人の行動を袴田さんが取ることができたとする検察側の主張に対し、弁護団が「到底認められない」と反証をスタート。証拠調べでは、確定判決が凶器とした「くり小刀」などが展示され、取り調べの録音テープの一部も再生された。
雨の降る中、傘を差して静岡地裁に入る袴田巌さんの姉ひで子さんと弁護団=10日午前10時25分ごろ、静岡市葵区 公判の冒頭、検察側は起訴状に記載した専務の年齢を「42」から「41」に訂正した。その後、再審公判の大きな論点のうち、犯人がみそ工場関係者と強く推認され、その犯人の行動を袴田さんが取ることができたかどうかーという点について弁護団が冒頭陳述した。改めて、工場関係者の単独犯ではなく、外部の複数犯による犯行だと強調した。
弁護団と検察側の主張の比較 弁護団は、犯人が工場の雨がっぱを着用して犯行に及んだとする検察側の主張に対し「重くてゴワゴワと音がする。雨も降っていない中、夜中に侵入する者が着る理由がない」と反論。放火された専務宅の消火活動時に複数の従業員が着たとの証言があるのに、捜査が十分に行われなかったと訴えた。くり小刀についても、法医学者の鑑定を踏まえて「形成することのできない創傷が被害者には存在する」と疑問を投げかけ、専務宅の包丁が凶器として犯行に使われた可能性を指摘した。
 検察側は工場の混合油が事件直後に減っているとして、専務宅への放火に用いられたとする。混合油の缶から人血が検出されたとも説明するが、弁護団は「陽性反応が(サンプルの一部に)認められただけで血液型は不明」と切り捨てた。その上で、事件当夜に袴田さんが工場の従業員寮に1人でいたことを捉えて犯行が可能だったとする検察側の主張を「単なる抽象的な可能性」と批判。「意味ある証拠は何もなく、そのような行動を取っていないことこそ明らか」と結んだ。
 第3回公判は20日。事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかったシャツやズボンなど「5点の衣類」を巡り、検察側が主張・立証を予定する。

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