記者コラム「清流」 名前を知る前に

 「はじめまして、今日はよろしくお願いします」―。相手の目を見ると同時に1枚の紙を両手で手渡す。
 名刺交換は自分を知ってもらうための玄関口で、自分もまた相手を知る入り口になる。「すてきな名前ですね」「こんな遠いところから来たんですか」など会話が弾む瞬間から取材は始まっている。
 先日、とある男性から受け取ったのは明るい生き物が描かれた名刺。寒さで手がかじかんでいることを忘れさせ、心がホッとした。名前より先に男性の人となりが分かったような気がした。その後男性はほほ笑みながら紙を裏返し、名前を知ることができた。
 まずは名前を知ってから―。と思っていたが、その前にもその人を知るヒントがあると気づく。それを見逃さず、関係性を深めるきっかけの一つとしたい。
(浜松総局・小林千菜美)

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